夏を題材にした小説やドラマは数多くあります。夏と言う季節は日本人の情緒に特に強烈に訴えかけてくるものがあるようです。そんな日本人特有の感性を短編としてみずみずしい感性で書き綴り一癖ある個性も加えられた名作、江国香織の「すいかの匂い」を紹介します。
誰もが不思議と共有している夏特有の「奇妙な感覚」
夏になると誰にでも記憶に湧きおこる白昼夢のような感覚ってないでしょうか?子供の頃に体験した不思議な感覚、よく分からない感覚、そんな夏にかんじる奇妙な感覚・不思議な感覚を作者特有の高い感性で描いた連作短編。
とにかく1篇が短い事と、その奇妙な感覚に浸りたく夏になるとたまに引っ張り出す事がある一作です。
出てくるアイテムがおはじきとかラムネとか、また昭和のノスタルジーを喚起させるアイテムばかりなのです。そして日本の夏特有のあのうだるような、熱に浮かされたような空気も話の中にパッケージされています。
子供から見た大人への目線
また子供から見た大人社会のよく分からない感覚や大人になってからも理解不能な変な大人達との邂逅も話の流れで出てきます。病院の病室や秘密基地、自分だけが拘って集めていたしょうもないアイテムなどのギミックもいろいろ。
主人公はみんな少女たちなんですが、男性でもあってもこの感覚わかるわかるとなること受け合いな奇妙できらきらして、時に背筋が寒くなる感覚にも満ち溢れた短編集。
クーラーの効いた部屋で見るよりも、風鈴のなる縁側で見た方がハマるという感想をレビューで拝見しましたが、まさに…ですね。


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