クリエイター色の強さが光る、シリーズ屈指の名作「聖剣伝説LEGEND OF MANA」

ゲーム

美しいドット絵と、制約に縛られない自由なゲーム進行。本編と切り離せるレベルの膨大なやり込み要素、押しつけがましくなくそれでいて普遍的なテーマ性を持つ哲学的なシナリオ。ゲーム史に残るレベルの名曲の数々…本筋であるアクションRPGとしての完成度はそこそこながらも、それを取り巻くあらゆる要素が極めて高いレベルでまとまった、いまでも忘れられないタイトルの1つが本作、聖剣伝説LEGEND OF MANAになります。


アクションRPGの草分けともなった旧スクウェアの名作シリーズ


聖剣伝説シリーズと言えばもともとはファイナルファンタジーの外伝としてゲームボーイで発売されたアクションRPG。ファンナルファンタジーと同じ魔法名やグラフィックのキャラクターを用いながら、アクションRPGとすることでより身近にプレイできる作品に仕上がっていました。


内容としてはゼルダの伝説的な謎解きにファイナルファンタジーのストーリーが乗っているという趣で、しかし、可愛い敵キャラクターやマナの樹を巡るストーリー、別れをテーマに据えた切ないストーリーなどシリーズのベースとなるテーマは既にこの初代で示されていました。


その後スーパーファミコンになり、2作目となる聖剣伝説2が発売。発売当時としてはキャラクターサイズが大きく表現され、スーパーファミコンの性能をいかした砂漠や雪原、森林などの豊かな色彩と、それらをよりエモーショナルに表現した音楽。戦闘やフィールドも出来るだけ切り替えを感じさせないシームレスな構成になりその中で、RPGらしい駆け引きを実現したモーションバトルやリングコマンドなど当時のアクションRPGの流れで見ても、草分けとなる要素が満載で、3人同時プレイにも対応。

非常に勢いのあった当時のスクウェア作品の中でもより画期的なタイトルに仕上がっていました。その後、グラフィックをよりパワーアップさせつつ6人のキャラクターから好きな3人の組み合わせを選んで進む聖剣伝説3が発売。

クロノトリガーやドラクエ6などRPGの話題作だらけの95年に発売した事もあり、やや地味な印象もありましたが、高いキャラクター人気を誇り2020年にはトゥ―ンシェイド調のアニメ絵で、シリーズの中でも一際力の入ったリメイク作品も発売されました。


そして、ハードが変わりプレイステーションの時代へ…この時代はスクウェアが次第にファイナルファンタジー本編に力を入れ出し、スーパーファミコン時代ではファイナルファンタジー、ロマンシングサガ、聖剣伝説と3本柱と呼ばれた3作がサガシリーズはサガフロンティアとして2作、聖剣伝説は外伝的作品であるLEGEND OF MANAのみのリリースとなりました。


内容も独自性を出しつつもRPGとしては王道だったスーパーファミコン時代に比べてやや尖った要素が目立つ作風にもなっていました。それはクリエイターの個性が前面に出されたプレイステーションというハードの当時の作風に寄る所もあったかもしれません。しかし、このLEGEND OF MANAに関してはそのクリエイター性が非常にいい方に働いたタイトルだったと言えるかもしれません。


様々な要素が雑多に混ざりあいながら、強烈な個性も持つ作風


グラフィックは3D化が進みだした当時にあって、あえてドット絵最高峰とも言えるほど高精細なドットに拘り戦闘は聖剣伝説3と同じく戦闘時にシームレスに戦闘専用の画面に切り替わるタイプ。


個人的にここだけは聖剣伝説2のようなモーションバトルにして欲しかったところではあります。。しかし、自然描写を売りにしたシリーズ中でもトップクラスの美しいドットで描かれた自然描写、下村陽子が担当した音楽はゲーム史上に残る名曲を複数産み出しプレイヤーが自由に進行できる短編シナリオのより集めというゲーム進行や、選んだ武器と組み合わせで無数の技を得ていく成長システムは同社のサガシリーズの流れを思わせる所がありました。


そして、それまでのポップな世界観ともまた違う、童話のような世界を描きつつ膨大な裏設定が存在し一つの大きな戦争が(大きな物語)が終わってしまった後、どこか喪失感を感じさせる世界での哲学的な内容まで含んだキャラクター達の織り成す物語は、クロノクロスやサガフロンティア2、FF9やFF10など当時の同社の作品の流れを思わせるものです。


そして愛嬌溢れるキャラクターたちが時にユーモアに、時にブラックジョークを交わせて展開されるシナリオはそれでもテーマが「愛」なのです。これは任天堂が手掛けた唯一のRPG「MOTHER」や当時大きく話題になったラブデリック社の「MOON」を彷彿させるものでもありました。(ちなみに本作を手掛けた制作チームは後にブラウニーブランとして独立。任天堂製のMOTHER3の制作に関与する事になります)。


そして、本編そっちのけで楽器政策やモンスター育成などの素材集めやクラフトに励めるライフシミュレーションゲームのような側面もありこちらはその世界観からも牧場物語やルーンファクトリー、アトリエシリーズに通じるものがあります。


時代を先取りしすぎた、本作が持つ普遍的な魅力とは


そのようにシリーズの伝統を保ちながら、数々の目新しい要素や決定版とも言えるほど作り込まれた要素を持つ本作。正直、それまでの3人戦闘でシームレスなマップを冒険していくスタイルとは変わってしまったため発売当時は賛否が別れ、地味な扱いになっていた面も否めないですがその作り込まれた世界観、高精細なドット絵、膨大なやり込み要素。何よりプレイヤーに体験させる意味があるシナリオ展開は今尚、胸を打つ作品になっています。


本作のテーマはずばり「愛」人々がかつてもっていたそれを戦乱の時代の中で喪失して久しくそれを各々が取り戻していく話でもあります。ミニシナリオの集まりとなっている本作ですが、連作形式で話が進んでいく3つの大きな核となるシナリオがあります。


それ以外にもNPCが主役となる話が複数存在し、基本主人公は巻き込まれるだけで、その行動を共にするNPC達の姿から様々な解釈をプレイヤー自信が受け取れるようなシナリオ構成になっています。


そのサポートとなるのが各シナリオを終わらせた際に話しかけると、かならず日記として感想を書いてくれる主人公の部屋にいるサボテン君の記す「サボテン君日記」。このサボテン君すらNPCの1人であり本作は自由奔放に(一部倫理観を逸脱したともとれるような)NPC達が思い思いに考えたり主張したりが繰り返されます。


このサボテン君日記も本編がどんなにシリアスでも、ノー天気な解釈で締めくくってくれるのですが、そういう解釈の自由、シナリオの展開も世界の形も全てがプレイヤーの思うままに形にしていく。それは現実社会にも同じように考えることが出来、みんなが好きなように生きている社会を肯定的に捉え直させてくれるような、一種の癒し系のようなタイトルとも言えるのかもしれません。

現在遊ぶには…

いま現在はリマスター版がPSストア、steam、任天堂オンライン、iOS/Android版などでDL販売されています。パッケージに拘る方はPS版を探してみるのもいいでしょう。名曲だらけなので、サントラも一押しです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました