最近のドラマは難解なテーマが多く、頭を使う事が大すぎる。もっと単純明快に痛快なドラマで日常を束の間忘れたい。。ベタですが、そんなニーズに応えたドラマが80年代という時代を代表するドラマでもある「あぶない刑事」シリーズでしょう。
1980年代を象徴する刑事ドラマ
自分が幼少期だった80年代頃は、バラエティもドリフなどでお馴染みのコント番組。そして、時代劇など今では見られなくなった「お金をかけた」本格的なテレビ番組が多く放送されていました。
やがて90年代に入ると、次第にそれら王道の番組のセオリーを崩した「差別化」あるいは「センスに振り切った」内容を重視した番組やコンテンツも増えていき、それは次第に「家族揃って」から「ある世代に受けやすい方向」へと特化していく流れになり、YOU TUBEやサブスクが氾濫する現在ではさらに「個人の嗜好」へと刺さるような内容へと細かく枝分かれるように、時代によって変化が起きている
のだと思います。
その流れと並行するように日本ではバブルが弾け、平成に入る頃より失われた30年へと突入。テレビも次第にコストを切り詰めていく流れとも連動していたような気がします。
いまではセットに金をかけた時代劇やコント、カーチェイスや爆破も厭わないアクションものの刑事ド
ラマなどはほとんど見られなくなってしまいました。かろうじて戦隊や仮面ライダーなどの東映アクション特撮がその文脈を継いでいるという形でしょうか…
時代の節目を生き延びて国産アクション刑事ドラマの代表格に
本作あぶない刑事は「探偵物語」などが示した「都会的な感性とコミカルな面を強調したハードボイルド」路線と爆破やカーチェイスも売りにした「西部警察」の路線も踏襲。
一方で、メイン2人を据えた脇を固める港署の刑事たち1人1人にもある程度焦点を当てて描かれており、その類型は「太陽にほえろ」からの集団刑事ドラマの伝統もしっかり受け継がれています。
一方で、刑事ドラマが毎週のように放送されていた末期にあたる作品でもあり伝統的な日テレ日曜20時代の連続刑事ドラマ、最後の作品に当たるのがシリーズ2作目の「もっとあぶない刑事」になっていたりもします。
また刑事ドラマでありながらトレンディドラマを意識したような、80年代当時の横浜のバブル期の風俗やファッションなどを大幅に打ち出した路線もあり、高齢層にも希求していた「特捜最前線」や「太陽にほえろ」と比較して明確に当時の若年層をターゲットにした作品でもあり、当時としては異端な作風でもありました。
特に当時の刑事ドラマではお約束になっていた殉職による退場などの悲壮的なムードを徹底的に排除し、ハードボイルドテイストは残しながらも痛快に楽しめるエンタメに仕上げたのが最大の特徴でしょう。
結果的に放送当時に3作も劇場版が作られ、1つの大きなムーブメントを産み。以後、推理ドラマや人情ドラマをメインに据えた刑事ドラマが主役になっていったこともあり「アクションを主体にした刑事ドラマ」の代表格として、長年記憶される事ともなりそれが90年代、00年代にも続編となる劇場版を産み出す原動力にもなり、長期的なコンテンツともなりました。
時代を感じさせるモノ、時代を超えたモノ
今見るとコンプラ重視の現在ではありえない取調室での派手な尋問や警察組織をリアルに描いたドラマが当たり前となった今では荒唐無稽な令状無死の操作方法や派手な銃撃戦などなど。。時代を感じさせる要素に溢れています。
それが逆にエンタメに振り切られていて痛快なのですね。80年代当時は70年代の社会的な課題に立ち向かう若者像は後退し、都市型の享楽的なムードが日本を包んでいた時代。ともすれば「軽薄」とも言われた時代ですが、とんねるずやBOOWYなどにも共通する上世代にも物おじせずに自分たちのルールを貫くという違うベクトルの熱さはあった時代でした。
日常とは離れたドラマに夢をみれた時代の勢いを感じるのですね。またクールなタカ、軽妙なユージ、ボケた役どころのカオル&トオル従来の刑事ドラマの模範を示すような近藤課長など、全員の役どころもなかなかに絶妙で本編のドラマが多少重めに終わっても最後は必ず明るく締めるあたりも、80年代のテレビドラマのノリを感じていいのですね。
テレビドラマは高度経済成長期~バブルの残り香がある80年代後半~90年代初頭と平成以降のムードが固まっていく90年代半ば~後半以降で大きな境界線があるように思っています。
その今とは別の1つ前のテレビドラマの時代のエッセンスが、高い水準で全部入りしているようなドラマが「あぶない刑事」なのです。
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