ある時期から邦楽ではボカロシーン出身のアーティストが大きな存在感を発揮するようになりました。もともとDTMという形でお馴染みのスタイルではあったのですが、ボカロの普及によって、より幅広い枠で新しい才能が芽吹いたのでした。従来のバンド編成を軸にした楽曲展開では出せないようなテイストがそこにはあり…そんな背景から出てきたユニットの名盤を一つレビューします。
ボカロP出身と言うブランド
ボカロP出身のn-bunaとボーカルのsuisからなる2人組ユニット。アニメを始めとしたタイアップにも恵まれ、同じボカロP出身の米津玄師やYOASOBIとともに2010~2020年代の音楽シーンをリードしていきました。
もともと打ち込みというかDTMやゲーム音楽にも慣れ親しんできた世代なので、最初に打ち込みの音源から曲を作り、あとからそれをバンド編成で再現すると言うスタイルには非常になじみがありました。
またかつてのバンド世代が追求したコンセプトを打ち出したアルバム構成や凝ったPVなども趣向は違えど、どこかJ-POP全盛の時代を思い起こさせるものです。
しかしCD媒体のブームが過ぎて、サブスクも全盛になった現在コンセプトで音楽を聴かせ、それをタイアップと両立させる…自分たちの持つイメージをPVなどを通して一貫して伝えるという行為は次第に困難な時代になってきていました。
サブスクでは楽曲単位で切り抜かれて視聴される事が多いため、複数の曲を合わせたコンセプトアルバムとは馴染みが悪く、ショップやTVでかつてのように大量のPVを流して注目させる手法も有効ではなくなってきています。
プロモやパッケージに明確に意味合いを持たせた
しかし、かつての邦楽やミュージシャンが行ってきた文法を令和の時代のスタイルに合わせて絶妙に展開しているのがこのユニットなのではないかなと思います。
詞を物語にし、それとリンクさせたアニメ調のPOPなPVは時代の感性に沿ったもの。そして、あえてコンセプトを強く押し出しパッケージの意味合いをより強調させる事で、レンタルや配信とパッケージを明確に差別化してい事も魅力でしょうか。
コアなファンは重厚なパッケージを楽しみ、カジュアルなファンはプロモや配信でも十分世界に入っていけるよう絶妙に住み分けがされています。
曲作りの発想も恐らく楽譜や各パート主体で成立した楽曲では不可能な実に多様な曲展開をしますが、ジャンルレスで楽曲単位で色んなジャンルがクロスオーバーしている点が面白く…
ピアノをメインにフューチャーし、あくまで生音やアコースティックな表現に拘っている事。情景描写に重きを置いている事、テクノやミニマルミュージックに通じる要素も隠し要素としてふんだんに取り込まれている事、何よりコンセプトに拘りを持っている事などですね。
個人的に好むエッセンスがこれでもかと多用されており、ボカロP出身者のミュージシャンの中にあっても一際シンクロする部分が強いミュージシャンなのでした。ただ、コンセプトや物語の意味合いが強すぎて、若干敷居を高めている感もあるのですが…
本作は前アルバム「だから僕は音楽を辞めた」の続編で前作が音楽青年エイミーの視点のアルバムだったのに対し本作は彼に憧れる女性エルマからの視点になっており2作で対になっています。
アルバムの構成も前作に近く、対になるような作りに、そして曲間を埋めるインストも臨場感を高めています。

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