人口減少、少子高齢化問題…令和を生きる時代にこの問題は避けて通れません。しかし具体的にどのような問題が起こるのか…ニュースなどでは断片的な問題だけで全体像が見えづらい問題です。本書は刊行されてから結構な時間が経ちますが、統計やデータを元に具体的にどのような問題が起こるのかを2050年頃までに具体例を挙げて記されています。人口減少問題は、日本が直面する最大の課題だと思っていて、その問題提起をきっちり記したという意味で、より幅広い方に見て欲しい本です。最低限の処方箋も記されていますが、まず未来の問題を本書で知り、ここの課題の解決策は個別の書籍などを参照にした方がいいかもしれません。まず問題を知る上での最初の一冊に最適の本です。
平成の時代に残した最大の課題
合計特殊出生率は四捨五入して2.0となる1.6を下回るとグレーゾーンとされるようです。先進国の多くはこの数値の周辺を辿る傾向にあるようですが、日本ではなんと平成になった最初の年、平成元年にこの1.6を下回り戦後最低の1.57に、その後数の多い団塊ジュニア世代が子育て世代に入る2000年代以降にやや上下した年はあれど一貫して低下していき、コロナ禍を挟んで新生児は70万人を下回る水準まで低下しました。
例えば公共機関のインフラなどは人口5万~10万人規模でなんとか一定を維持できますがここを下回るとインフラや住民にかかる負担が大幅にあがるとも言われています。
本書では、人口統計学はあらゆる統計学の中で一番確度が高いものと謳い、著者が調べ予想した様々なデータが2010年代後半からおおよそ2050年代まで細かい解説を含んで記されています。
例えば2033年には3件に1件が空き家になる、2040年には本書に限らず度々報道でも目にする自称ですが、消滅自治体が急増すると言われています。
戦略的に縮む、持続可能性を追求するという視点
これを少しでも避け、現実的に少しでも明るい未来に繋ぐためには著者が言う所の「戦略的に縮む」という発想。つまり平成の時代までに目標とされていた「成長」や「拡散」ではなく「持続可能性」と「戦略的撤退」が必要になってくるのでしょう。
そして成長に関しては何を選択し、何を捨てるのかの判断がますます重要になってくるはずです。本書が世に出てから8年以上経過し、その間にはコロナ禍の混乱や円安による物価高などの社会問題も起こりましたが、自動レジのわずかな普及とキャッシュレスの促進、テレワークの推進などが進みましたが、かかる問題に関しては具体的な改善策とは言い難い変化に留まっています。
昭和後期~平成年間にかけて進んだ少子化は日本の停滞と歩みを共にして進行した問題だとも言えますがその根は深く、氷河期問題との相関もあり本書で示された未来はなかなかに重く絶望的なものです。だからこそ、そこから目をそらさず考えるきっかけとするためにも本書はいまなお重要なテキストでありつづけています。

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