テレビシリーズも含め、多くの映像作品が作られた攻殻機動隊。特に有名なのは押井守が監督した「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」ですが、そのスタイリッシュさはそのままに原作版が持つ刑事ドラマ的テイストにより寄せてネット社会を風刺したような作風が絶妙な最初のテレビシリーズの名エピソードを扱った人気作をレビューします。
SF漫画の革命児
もともとは文字がすらーっと並び、異様な書き込み量を誇る、極めてマニア向けな士郎正宗の漫画版からスタートした攻殻機動隊。
まだ日本でサイバーパンクと家われるものに馴染みがない時代に、強烈にそのジャンルのインパクトをたたきつけた作品でした。
いっぽう押井守が監督したアニメ映画版は、その世界観以上にヴィジュアル、構図、スタイリッシュさとすべてが革命的で、押井守特有の自我を巡る物語も作品の雰囲気と見事にマッチ。原作の雰囲気とは離れながらもグルーバルで多大な影響を与えた革命的な劇場版となりました。
それから数年後…同じプロダクションI.G制作で劇場版とはまた違った趣で、原作に寄せつつも劇場版の雰囲気も残した独自のバランス感覚で映像化されたのが初の連続アニメシリーズとなったテレビアニメ版「STAND ALONE COMPLEX」でした。
ネット社会の問題を先取りした「笑い男事件」
「STAND ALONE COMPLEX」と題されたTVアニメシリーズでは、X-FILEなどの海外ドラマのように単発で完結する話と、全編通して1つの繋がりをもつ連作長編シリーズが1つのシーズンの中で混在する後世になっています。単発エピソードでも名作よ呼ばれるエピソードは多いのですが、特にインパクトが強かったのが最初のTVシリーズの長編エピソードである通称「笑い男事件」を巡るエピソード
最初はとある映像に移っていた銃撃事件に笑い男マークと呼ばれるキャラクターのマークが上書きされていた事がきっかけでそう呼ばれた事件、それが時間差で同じギミックを施された別の事件が起こり、以降最初の首謀者の意図を外れて同じ手法の模倣犯が溢れた事、そして本筋の笑い男事件はとある大企業を巡る国家的陰謀絡みの事件として発展してゆく…という複雑な経緯を辿っています。
連続したエピソードになっていますが、事件を巡るエピソードの中には単発で印象深いエピソードも入り、それが実は笑い男事件に絡んだものだと判明する展開があったり。最終的に公安9課の存亡にかかるスケール大きな陰謀劇に発展したり、ゴースト(AIが人間的な自我を持つ)というシリーズを通したテーマをも内包。
そして笑い男事件そのものは首謀者の手を離れネットの拡散力によって制御不能の混乱に陥るもある時期がきたらあっけなく終息する現代のネット社会のルーチーンや社会問題をいち早く先取りしていた面もあるなど、とにかく多面的な魅力にあふれた傑作でした。
何度も鑑賞するのに手堅い総集編
本作はその笑い男事件のみをまとめた総集編になっていますが、TVシリーズを何度も見るとなかなかしんどい所を適度な編集でテンポよくまとめられています。何度も鑑賞するのに非常にありがたい作りになっていますが、笑い男事件そのものが複雑な経緯を辿るエピソードなので、一度はTVシリーズ本編を見てから目を通すのがいい流れかもしれません。

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