国産を代表する作家による傑作長編ミステリー「白夜行」

BOOK(マンガ・小説・ビジネス)

ミステリー小説は読書の面白さをダイレクトに引き出してくれる定番のジャンルです。そんな界隈でドラマ化や映画化など実写作品に事欠かず、ヒット作を長らく連発している東野圭吾。その作品の中でも1冊で完結する長編で、考察の面白さも大河ドラマ的なスケール感も、何より伝統的なミステリーの系譜を丁寧に織り込んだ作風で忘れられない1作になっているのが本作「白夜行」です。



作者を代表する一作。ミステリーの面白さに溢れる


東野圭吾と言うと現代を代表するミステリー作家。映像化作品も多く、本格派で重厚なものも多いのですが容疑者Xの献身や秘密など、必ず切ない方向のドラマを交えることが特徴。


本作は800項にも渡る大作ですが、内容としては有名ミステリーの文脈を継ぐストーリー。一時期、有名なミステリーを漁って読んでいた時期がありました。

本作と印象が近い所では、不幸な生い立ちのある容疑者を巡って、過去を探っていくと言うと戦後を代表するミステリーの一篇「砂の器」を思い出すのですが、犯人であるらしき2人の直接的な台詞が一切なく、全ての証言は関係者からのみと言う流れは平成を代表するミステリー「火車」を思わせるものもありました。


調べてみると、この2タイトルと白夜行はよく傑作ミステリーとして共通項を持って挙げられる事があ
ると…そして、本作はラストまで読むとある種の切なさ(純愛)のようなものが隠れたモチーフとして
浮き上がってくるのですが、これは作者ならではの持ち味だなと感じます。


大河ドラマとしての構成もうまい


亮司と雪穂という2人の謎多き人物を巡るストーリーでもあるのですが、作中で19年の歳月が流れ
その間に様々な人物が入れ替わりで登場してきます。その様はある意味で全編を通しての大河ドラマを思わせるものもありました。


まったく脈絡のない個々のドラマが一本の線で繋がっていく様はまさに読書の醍醐味といってもいい
でしょう。分厚い本なのですが、構成の力が上手いので、あっという間に読み終えてしまう一篇です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました