孤高の美学が光る名盤「LUNA SEA/MOTHER」

MUSIC


様々な音楽ジャンルがひしめいていた90年代の邦楽シーン


自分が音楽に興味を持ち始めた時期は、B’zを始めとするビーイング系のユニットや小室哲哉プロデュースの絡んだavexのダンスユニットやガールズポップ系またベテラン若手を含めて、シンガーソングライター系も大いに存在感を発揮していた時期。


CDセールスが毎年記録を更新し、音楽が1つのメディアとしてバブルのような様相を見せていた時期でもありました。そんな中、バンド系もまたタイアップ人気との連動で大きなセールスを上げるバンドも多くミスチルやスピッツ、ウルフルズなどが続々とブレイクしていきました。


ロッキンオンジャパンなどが取り上げる、いわゆる洋楽至高のファンの支持が厚いバンドとしてブランキージェットシティやエレファントカシマシ、ザ・イエローモンキーなど。


また渋谷系と言われるムーブメントも起こり、フリッパーズギターやピチカートファイブなどの都市型音楽とでも言うような、センスの高さや感度の高さを売りにするシティポップなバンドも台頭し現在、海外でも多く支持を受けるフィッシュマンズなどもそんなムードの中、精力的にライブをこなし世界でも類を見ない音楽を形にしていった時期でもありました。


黒服系と呼称されていたバンド群


そんな音楽の流行が目まぐるしく変わる中、1つまた強烈な個性を放ち独自のファン層を形成していたのが当初は「黒服系」と言われていた80年代のニューウェーブやジャパメタ、ポジパンの流れを汲んだバンド群。


80年代ニューウェーブの洗礼を受けたバンド達はやがて黒い服に身を纏い、派手なメイクを施し、邦楽ロック系の1派閥として明らかに異質な、しかし1つのカテゴリーを形成していきました。


最もメジャーな存在として目立っていたのはが、やはりX-JAPAN。亡くなってしまったギタリストのhideが掲げた『PSYCHEDELIC Violence crime of visual shock』が語源となり後にヴィジュアル系と呼称されるようになりました。


とはいえバンドとしての各々の形や表現に、重なる部分はあれど、個々で表現したいものは勿論バラバラ、この呼称自体にバンド側からは否定的な反応を示される事も多かったのですがやはり支持するファン層や関連するバンド同士の繋がりから1つのカテゴリを形成する1群であったのは間違いないと思います。


ヴィジュアル系というカテゴリの「1つの型」を形成した時期


そんな中でも、やはり後々のバンドへの影響やX-JAPAN以後のバンドの中で1早くブレイクしたタイミングなどもあり、LUNA SEAは1つの境界を示すバンドだったと言えるかもしれません。DEAD ENDが示したニューウェーブとジャパメタの融合BUCK-TICKが示したダークな打ち込み=インダストリアル路線。

X-JAPANの緩急はっきりしたメロスピ路線、そしてメディアを積極的に活用する形態これら先達のバンドのもつイメージを丁寧に吸収し、Xの弟分的なバンドとしてコラボレーションしながら積極的にメディアにも露出。


当時洋楽でブームを巻き起こしていたグランジ色も取り込み多くの人が思い描く「ヴィジュアル系」というカテゴリの音楽をより具体的に突き詰めて形にしていったのがブレイクした当時のLUNA SEAだったのではないでしょうか。


活動休止のソロ期間中にボーカルである河村隆一が後に日本のソロ男性で一番売れたアルバムを発売すると同時にバンド時代とは違う、意図的に歌謡曲に寄せた歌い方やナルシストなキャラが一人歩きし、それが再始動後も尾を引いてファン離れや色物的に見られる事も一時期増えてしまいましたが…


そんなLUNA SEAを代表する曲でもありヴィジュアル系を象徴するような疾走感溢れるキラーシチェーンが、本アルバムに収録されているROSIER、雄大なバラードでラストを飾るMOTHERを始め、聖書・黙示録的な西洋風の世界観に愛や生命観を漂わせた雄大な世界観は、いわゆるティーンの永遠の中二心を刺激しこの時期に、ヴィジュアル系と言われるバンドの1つの型を提示したと言っても過言ではなかろうと。


よりバンドの内省的な表現を突き詰めた次作「STYLE」とともに昨今、再販また両アルバムの再演ライブも刊行された事からも、バンドとしてもメモリアルな記念碑的な1枚になっています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました