平成の緩い空気と不穏な空気を両面で描いたカルトな国民的ドラマ「TRICK」

MOVIE(アニメ・映画・ドラマ)

深夜ドラマはマニアックなテーマや奇妙なキャラクター、そして都会的なロケーションやリゾート的な場所ではなく、寂れた地方の片隅や山奥の廃墟などのニッチな場所を魅力的な舞台にしてしまうのも魅力です。そんなマニアックな題材を極力大衆的に分かりやすく伝えてくれたのが本作「TRICK」シリーズでした。


いつの間にかお茶の間に浸透したカルトなテレビシリーズ


ケイゾクなどで既に人気を博していた堤幸彦がメインになって手掛けたTVシリーズ。堤監督のドラマはもともと、どこか舞台や小劇場的なノリを画面に出すことを得意としていましたが、直前に放送されていた「ケイゾク」を始め、それまでの作品でもあったような日本の田舎や孤島などのサスペンスが起こりそうな舞台仕立てや雰囲気はそのままに、本作「TRICK」シリーズでは地方あるあるや役者ネタ、さらに奇人・変人キャラで固めることでスタートにもなった深夜ドラマ枠の強みを大いに漂わせていた作風になっていました。


そのうえでケイゾクなどでもお馴染みだった不穏を煽るようなカメラワークやどこか黒い人間の一面も描写されており、独特な味わいに仕上がっています。その独自のバランス感覚が受けたのか、長らくシリーズは続き、劇場版も定期的に作られる人気作に主演の仲間由紀恵、阿部寛共に大きな出世作ともなったのでした。

また2000年代はWEB媒体やDVD媒体の普及に伴って、それまでニッチなジャンルで会った廃墟や廃村などのB級スポットが注目を集めたり、アニメや小劇場のノリが地上波ドラマに積極的に取り入れられた時代でもありました。後の時代で言えば「勇者ヨシヒコ」シリーズなどもその流れを汲んでいました。


本作でうまいのは、それまであまりとりあげられなかった。あったとしてもバラエティ番組の枠に納められていたそれら日本の特有の「B級スポット感覚」や「田舎あるある」を本格的にドラマの世界に持ち込んだことかもしれません。


八つ墓村などに見られる田舎の古い因襲や情念のドラマを珍スポット的なカルトな切り口で見せたこと。それを90年代以降人気を博していた推理ドラマの文法やバディモノという形式で見せたことがまた新しかったのです。


2000年以降のTVドラマの1つの転機にもなった


本作の前身とも言えるケイゾクにあった90年代末的な、サイコサスペンスを思わせるどこか不穏な空気は払しょくされ。レギュラーはお約束のバカなノリで導入部を引っ張り。毎回出てくる豪華ゲストも、ノリノリで変なキャラを演じさせる内幕劇的な面白さも魅力の1つ。

古畑任三郎ばりに豪華なゲストが笑ってはいけないで演じるような奇人キャラを演じる。これも当時の時代性がよく出ていた面です。オカルト枠におさまりそうなマニアックな雰囲気、題材にもかかわらずロングスパンで人気を博したのはそれらのノリが時代に乗っかって、大衆に受け入れられやすかったからかもしれません。


ケイゾクは不穏な空気の合間にとてつもないネタが挿入されるギャップが面白さもだしていましたが
本作ではネタ的な空気で通常進行していきますが、逆に結末はでダークなオチが付く事が多いのが作風にもなっていたかもしれません。


また、00年代前半の深夜ドラマ的な自由な空気も魅力になっています。スタートが深夜枠発だからこそ、ベースとして比較的自由な事ができたはず。このTRICKの緩いノリは先に述べた「勇者ヨシヒコ」など後のテレ東系深夜ドラマ枠に受け継がれ、一方でゴールデンでは「相棒」や同じ堤作品の流れとなる「SPEC」など、改めてバディモノがたくさん作られていく契機になったと思います。

水戸黄門的にたまにスペシャルドラマでつづいていきそうな空気もあったのですが、やはり主役2人でずっと引っ張るには年齢的に無理も生じる事もあり、2015年のスペシャルと劇場版で完結。そう考えると平成の半ばとともに歩んで平成のうちに綺麗に閉じたシリーズだったと言えるかもしれません。そのうちひょっこり復活しそうな気もしていますが。


個人的にはエピソードの濃さや雰囲気的にも最初のTVレギュラーの2シリーズが特に好きなのです。季節的にも夏と冬で対照的なのがまたいいんですよね。平成の時期、常に現役感のあった本作も次第に懐かしさを感じられる程度に時間は流れました。2000年代を、平成中・後期を偲ばせるドラマシリーズだったと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました