映像美と悪魔的な不条理さの同居「時計じかけのオレンジ」

MOVIE1(映画・ドラマ)

古い映画の中でも、普遍的なテーマや前衛的な映像で余裕で時代を飛び越えてしまう作品は数多くあります。そんな中でも映像の鮮烈さと内容の不条理さで、いまだに現役作品に負けないほど語られている歴史的1作を紹介します。

目に焼き付くような鮮烈なビジュアルと不穏さ

説明不要のスタンリーキューブリックの歴史的名作。とにかくセットや美術に異様に拘る完璧主義者としても有名だったキューブリックでしたが、その上でこの作品は世の倫理観を問う非常に悪夢的な魅力にも満ちていました。

冒頭から白一色の衣装に身を纏った主人公たちが暴力の限りを尽くすのです。それが凄惨というのでもなくある意味喜劇的なようにも撮られているのが、かえってうすら寒く感じたりもする独特の怖さを演出しています。

またこの白で統一されたビジュアルは本編で背景含め、たびたび登場してきており、その目の覚めるような美術のインパクトもまた絶大なものがありました。

そして、悪逆の限りを尽くした主人公が後半では一転、いままで悪事を重ねた被害者から手痛い報復に合うのですが、こうなってくると何が正義で、何が正解なのかが分からなくなってくる。一種の不条理劇のような構図にもなってきます。

SFとすることで一種の寓話として時代を越えた普遍性を獲得

本作は一応、公開当時から見た未来を舞台にしたSFという事になっていますが、無秩序のカオスと、それに相反した管理された状態への恐怖も描いています。SF映画と言うよりも未来という舞台仕立てを用意する事で、現代劇では描写が困難になりがちな「過剰さ」そして「風刺」を描いているように思えます。

その悪夢的なイメージにキューブリックの鮮烈な美術や色彩感覚がフィットしてくるのです。いつの時代も悪意ある人間は一定数必ず生まれてくるもので、それをどう管理し裁くのか、実際に被害にあったもの。そしてそもそも心が壊れてしまった加害者にとっても切実な問題です。

これを正面切って描くと未来SFもの=ディストピアもの。ドキュメンタリー風に描けば社会派と呼ばれる作風になるのでしょうが、本作はそれをどこか寓話的に描き、先にも述べたように喜劇的にも感じる作風にした事で逆説的な恐怖と時代を越えた普遍性を獲得したのだと思います。

なかなか過激ではっきりとしたジャンルにも収まらない映画だと思うのですが、非常に映画そのものの表現や面白さにも満ちた作品ではないでしょうか。

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