時代に埋もれない先鋭的なビジョンを描き出した異端の傑作「ブレードランナー」

MOVIE1(映画・ドラマ)

SFというと派手な展開やスタイリッシュな映像があるというイメージが強いものですが、その分、先の時代に進むと映像が古びて感じてしまう要素を強く含むジャンルでもあります。そんな中、刺激的なビジュアルと恐らくいつの時代に見ても古びない格式高い雰囲気を融合させた記念碑的SF作品をレビューします。

まったく新しいSF映画のビジョンを示した異端の作風

本作が登場するまでSF映画の多くは「2001年宇宙の旅」に代表される哲学的なSF「スターウォーズ」に代表されるスペースオペラ、「エイリアン」に代表されるパニック系など、既に多様な作品が生み出されていました。

しかし、酸性雨の降るネオン街に空中にはアジア的なヴィジョンが舞う無国籍でカオスな、どこか暗い未来像をヴィジュアルに起こした本作は。これまで比較的「明るい未来」を打ち出したSF映画に大きなインパクトを残しました。

原案となったのは「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」ですが、それを映像化するに当たってディストピア的な未来像を見事ビジュアル化させることに成功。派手な展開も極力抑え、背景や小道具で未来を感じさせる本作の作りは徹頭徹尾クールなものでした。

ビジュアルのイメージだけでない影響力

ハリソンフォードもスターウォーズやインディ―ジョーンズとはまったく別の寡黙で思い悩む中年の男性主人公という新境地を切り開いた作品です。哲学系のSFではなく、アクションや舞台装置に徹底的に拘りながらもハードボイルドやフィルム・ノワールに通じる刑事ドラマ的文法を取り込んだことで、アクションやギミックにも拘りつつ大人な匂いを漂わせるSF作品として成立させています。

日本においても公開まもなく放送された装甲騎兵ボトムズから、ファイナルファンタジー7やAKIRA,攻殻機動隊まで数々の作品がこのビジュアルにインスパイアされていきました。

サイバーパンクと呼ばれるディスピア的な暗い管理社会を思わせるSF像を認知させた点もそうですが、アンドロイドを巡り、主人公が自身の過去やアイデンティティに悩む過程もまた、それら後続作品に影響を与えていった点でしょう。

そのインパクトからアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された経緯もあります。勿論、アメリカ本国での評価もすさまじくSF映画や視覚効果のランキングで特にクリエイター勢からの指示が圧倒的で常に上位にランクする常連の作品になっています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました