物事は見方次第?…堅苦しくない人間賛歌な哲学も含んだアートな映画「バッファロー66」

映像(アニメ・映画)

ミニシアター系映画というと、特に監督の思想や映像美が前面に出る、商業性を度外視した作品が多いという印象があると思います。刺さる人には徹底的に刺さるけど、分からない人には分からないそういう映画が多いと言うイメージを持つ方も多いでしょう。そんな中前衛的な画面や会話劇に加えて、誰にでも刺さるようなほっこりしたラストに行きつく。哲学的な内容も含んでいるのが、本作です。

男子の願望を詰めたかと思いきや??浪花節的アート映画

本作はアート系な匂いプンプンのやや薄暗い画面…調子よくまくしたてる主人公…場面場面で挿入されるアップの画面も非常にスタイリッシュなのです。しかしそのストーリーの筋は非常にベタな人情もの?に回帰する…このギャップもいいんですね。

本作は母性本能溢れるクリスティーナ・リッチが行きがかり上一緒になったヴィンセント・ギャロを次第に放っておけなくさせる流れになっています。つまり無意識な承認欲求を望む男性心理に沿った作品かと思いきや、むしろダメ人間に母性を感じる女性の側がメロメロになってしまった…という構図がある用です。

それだけ、この作品のヴィンセント・ギャロ演じるビリーが魅力的に描かれていたという事で、この2人のキャスティングが男女どちらから見ても魅力的だったのですね。

先鋭的な演出も光る

そして前述したアート感覚、全体的に薄暗いグレーを基調とした色彩がこの映画のドラマ面とシンクロしていて、それがラストの淡い光とのコントラストでドラマをより彩っています。作中にかかるのが古い時代のプログレばかり、というのも非常にマニアック。

実にアート系映画としてのスタイリッシュさやマニアックさが濃厚に詰まっている作りになっています。一方でビリーがレイラを拉致する流れや両親との会話などはまるでコント映画を見ているようで公開当時に本作のギャロを指して松本人志のよう…と言われるのはこのあたりの流れもあるからですね。不思議と見た目も少し似ているんですよね。

実は哲学的なラスト

そしてなんといっても本作で出色なのは先に述べたラストシーンでしょう。けっきょく物事は、人生は捉え方一つで幸福にもなれば悲劇にも喜劇にもなる。その差は紙一重で幸せは案外身近な所に転がっている。自分が生きていようがいまいが案外他人は関係なくやっていけてしまう。

なので自分は自分の幸福を追求するべき。他人の小さな幸福を願えるものが、案外本当の幸せを得ることが出来る。シンプルだけど幸福の本質をついたような実に示唆的なラストでした。本作は日本では特に異例のヒットを飛ばしたようですが、日本人の気質にどこか絶妙にマッチするところがあったのでしょう。

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