漫画誌・アニメ誌に残る寓話的伝記譚
昔懐かしい田舎の風景、そこに強烈な郷愁を感じる。日本人ならDNAのどこかにそういった気持ちを持っているものだと思います。
本作は月間アフタヌーンで2000年代に連載されていた作品、連載時より既に密かに話題を呼び、漫画賞なども受賞していた記憶があります。この時期は「ああ女神様」「無限の住人」「げんしけん」などが並んで連載されていた時期。もともとの持ち味であるバラエティーの濃さや誌面の密度もとりわけ高かった記憶があります。
架空の、懐かしい日本
舞台となっているのは架空の日本、江戸時代のどこかとも取れるし近代化して間もなくなような匂いもある。そして、日本人が伝統的にもっている土着の精霊的なものが「蟲」として人間の世界に影響を及ぼすファンタジーでもあります。
そこに描かれるのは昔懐かしい里山の風景と、人間が生きていく上での根源的な欲求や業
そう書くとドロドロしていそうなイメージなのですが、それらをどこか静かな空気で淡々と描き切っており苦い味を残さない所が、この作品の妙味かもしれません。中には悲壮に終わる話もありますが…
主人公のギンコはそんな蟲を「払う」事を生業としており、いわば妖怪退治の退魔師のような役回りなのですがそれを行商人や学者のような雰囲気や出で立ちで表現した事が、この漫画の作風にまさにぴったり当てはまっていたと思います。
アニメの方は超優秀なスタッフが緻密に1話1話を描いており、アニメーション賞を受賞してもいます。
様々な1話完結アニメがありますが、型にはまったストーリーではない事とロケーションや雰囲気の美しさ、1話完結の収まりの良さやエピソードのバラエティの豊かさから、繰り返し干渉に耐えられる作品になっていると思います。
まさに平成の世に出された大人版・まんが日本昔話とでもいうような。どこか寓話的な作風がまた気持ちいいのです。
夏の暑い日中にも、冬の寒さを凌いだ室内でもピッタリハマる話が納められており、ビターエンド、結末の流れだけみるとバッドエンドに終わるものもありますが、それでも各話何らかの救いを見出し情緒的に締める事が多いため、見ていてあまり嫌な気持ちを残して終わらないのもいいのですよね。
極端におかしなキャラクターが出てこないのもまたよく。現実の疲れを瞬間忘れさせてくれる、そんな作品でもあります。


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