まさに時代を超えた普遍的魅力を放つ「名画」
いわゆる古き良き時代の名画(60年代以前のもの?)もしくは、名シーンと言われると様々な年代で、様々に語られるシーンがあげられると思います。
そして、古い時代の洋画で特に花形だったジャンルと言えば西部劇にスパイもの。本作、明日に向って撃てはアメリカ西部開拓時代に実在したアウトロー…ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドをポールニューマンとロバートレッドフォードが演じ、軽快な西部劇の展開も挟みながら「雨に塗れても」をバックにキャサリン・ロス演じるヒロインのエッタ・プレイスとポール・ニューマン演じるブッチ・キャシディが自転車を乗り回すシーンなど名画的な趣も濃厚に漂わせています。
アウトローを気取りながらも、内心は小心者だったり気のいい性格の主役2人、とぼけた性格のキャラクター達。一方でまたモノクロの回想から始まる様に常に何かに追い立てられるよう、先へ先へ進もうとする2人の男の焦燥感。西部劇ではお馴染みの列車強盗シーンなども交えながら、ハードボイルドマナーに乗っ取った展開が軽妙につづいていきます。
一方で合間合間で挟まる穏やかな日常や旅情シーン。西部劇ならではの異国情緒感も魅力。一般的にアウトローが社会的な「何か」と対立し、挫折したり破滅へ向かっていくのが当時の映画の潮流の1つ「アメリカン・ニューシネマ」だと言われており、本作もその文脈で語られる事が多い作品です。
一味違うアメリカンニューシネマ。一味違う西部劇。
しかし、他のニューシネマと言われる作品が、どこか薄暗い都会の片隅や悲壮感の強いキャラクターが主役になる事が多いのに対して本作は主役2人の性格や周りを固めるキャラクター達、何より西部劇をベースにしている事もあり現在の目で見ても「カッコよさと名画の要素を併せ持つ」普遍的な魅力を誇る作品になっていると思います。
西部劇の側面で見てもガンマンが無法者を懲らしめたり、早打ち対決をしたり、ひたすら銃を片手に暴れまわるという流れでもないのです。また主役2人がクール&ファニーという若干デコボコなコンビながら、いい感じのバディとして描写されているのですよね。
加えて、エッタプレイスというサンダンス・キッドの彼女でありながら奔放に生きるブッチの精神的な支柱のようにも見受けられるヒロインを配置した事で、2人のキャラクターや対比や関係性により奥行きも出て、さらに前述したように名画的なシーンや日常シーンのリアリティも増しているのですね。
2人の主役の魅力から男受けする要素と、女性受けする要素がピッタリ混ざり合っているのが絶妙なのです。国産のもので例えるならタッチの緩やかな三角関係、ルパン三世の軽妙洒脱のアウトロー要素、あぶない刑事のバディ感、これらが絶妙に混ざり合っている感じでしょうか。
それはまさに優しくも意地や生き様で突っ走る男の生き方と、そこに強く惹かれながらも最終的には地に足のついたあくまで現実を見る女性の対比としても描かれ。その背景には「今日はついてないけど明日はきっといいことあるさ」という、カラっとしたフロンティアスピリットが流れているのです。
破滅に向かうアウトローを描きながらも義賊的な2人だからこそ、これらの背景が似合うわけです(史実にもけっこう忠実らしい)そしてそれらの要素はラストシーン直前の2人の掛け合いに象徴されており、有名なストップモーションの最期へと至ります。
コメント