長いガンダムの歴史を総括したとも言える記念碑的傑作「機動戦士ガンダムUC」

MOVIE(アニメ・映画・ドラマ)


宇宙世紀の1つの到着点


ファースト~逆襲のシャアまでの宇宙世紀のガンダムをその世界観やニュータイプというテーマを引き継いだまま、うまく総括できた作品だと思います。ラストバトルも賛否あるけど、あれはあれで個人的には好きです。でも、古くからのファンでは意見が分かれる展開にもなっています…。個人的にはガンダムでも逆襲のシャアと並んで好きな作品です。


本家宇宙世紀のガンダムがF91~Vとその後、作品のテーマは多様になりつつも未消化だったり、どこか後味の悪さを残したものに終わり、ガンダムを総括する意味合いのあったターンエーガンダムはラストこそ見事な着地点に来つつも、本来あったニュータイプの概念などがもはや消えてしまっていたことなどもあり、あくまでアムロやシャアやカミーユのいた時代の宇宙世紀やニュータイプという概念に一つの着地点を見出した点は大きいです。

拡張していった「宇宙世紀」のガンダム

本来は「逆襲のシャア」で監督の富野由悠季自身も決着をつけたつもりでいたアムロやシャアやニュータイプといった概念が、その後のアニメ史やサブカルチャー、またはゲーム媒体などで幾度も語られなおした結果、ガンダム世代でもある作家の福井晴敏が書き下ろしていた小説に、独自の改変も加えて見事なクオリティで展開されたのが本作です。いわばファンの視点から拡散していった映像作品とも言えるでしょう。

実際にその後のF91やV、そして逆襲のシャアなどにしてもニュータイプの力や人類のその後についてははっきりした指針は示されていないまま、戦争だけが繰り返されておりアムロやシャアのその後についてもぼんやりした形でフェードアウトしていた感は否めませんでした。

ニュータイプ論やシャアの行く末に一つの決着を見せた??


ガンダムがもともとも内包していた地球と宇宙移民との対立がより分かりやすく語られていたり、フルフロンタルというキャラを配置することでシャアのキャラクターや苦悩が相対的に深まった点も秀逸でした。特にジオンと地球の思想的対立の背景や、地球の環境汚染、地球人の庶民から見た視点などファースト以降あまり描かれなくなった視点に再度スポットを当てて丁寧に描写されています。

同時に余り語られる事のなかったZZの設定の掘りおこしや、ある程度視聴者の解釈に任せているとはいえ、ニュータイプ論や逆襲のシャアに到るシャアの思想、アムロやララァのその後についても、より踏み込んだ描写で総括されていたと思います。

シリーズが積み重ねてきたものの結集


大人キャラが主人公のバナージを正しく導いていったりなど(このへんはカミーユの再編とも言えるでしょう)、細々含めるとご都合主義はあったりしますが、ファンサービス的なものも含めて、やや散漫な印象のあったZ~ZZやVあたりまでで富野監督が描こうとしていたものをより分かりやすく再編した作品だったと思います。

だけでなく、ターンエーが内包していた「全てのガンダムを肯定する」視点や、ガンダムSEED以降より顕著になった分かりやすいエンタメ要素との融合&CG作画におけるスピーディーな戦闘描写、0083などのOVA作品で見られた旧来のモビルスーツをスタイリッシュにリファインする見せ方など、他のガンダムシリーズの積み重ねてきた歴史も着実にフィードバックされておりました。

その後NTという直接的な続編を挟んで、本作の続編の構想もあるようですが、本作の時点でも既にテーマははっきりまとまっており、現時点での宇宙世紀ガンダムに1つの決着をつけた作品になったと言えるでしょう。

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