雄大な生命観とエモーショナルな表現に振れたアートロック「ACIDMAN/equal」

MUSIC

ありきたりな表現はなく、ドラマ性やカルトな表現でもない、エモーショナルな方向に振れた楽曲が好みの方にイチオシしたいのが、今回の1枚です。

フェス時代を駆け抜けたアート系ロックバンド

メンバーが薬剤師の資格を持っているとしても有名なバンドACIDMAN。リリース当時は特に鳴り物入りでデビューした感もあり、まったく趣が違うシングル3作を短期間でリリースした事も話題になりました。

3ピースバンドとしても卓越した技巧を持ちながらも、当時の複雑化しリリースペースも早いシーンの中では個人的にはそこまで目を引く要素もなかったのです。当時は国内のフェスブームが確立され始めちょっとしたバンドブームの趣もあり、CDもまだセールスを一定にキープしたいた時代。とにかくデビューするバンドの数もまだ多かったのですよね。

しかし今や20年選手となり劇場版ゴールデンカムイの主題歌「輝けるもの」のタイアップでも大きな注目を集めました。

バンドの方向性を固めたような1枚

理系なバンドらしく歌詞には科学用語や宇宙を思わせる雄大な楽曲が多いのですが、キャリアが後にいくほどに大木伸夫のボーカルが繊細さを増していき、いわゆる「エモーショナル」な表現が強くなっていく流れを感じます。

個人的にACIDMANのイメージがはっきりしその完成度に驚いたのが3rdアルバムとなる本作。ポストパンクにハードコアバンドの表現が混ざった最初期を彷彿とさせるFREAK OUTで幕を開きつつ、降る秋、イコール、水車、彩-SAI-という良質なミディアムナンバーの連続で、一気にエモーショナルな世界へ引き込まれていきます。

巡る季節そのものを音に例えたような世界観

まだ激情ハードコアな表現も強かった時代なので、ハードな曲になるとシャウトも交えながら激しい展開になるのですが、この後次第にアップテンポな曲も穏やかな表現に落ち着いていきます。しかし、感情の振れ幅や楽曲の緩急という点で、このアルバムの時期のバランスは見事。

季節を巡るような、情緒的な表現が多いのですが、それを人間関係やドラマ性ではなく、自然描写や感情そのものに重きを置いて詞を起こしている点が独特で、クール且つエモーショナルなのですね。

初夏から秋を思わせる時期に重ねて、生命観の昂ぶりと生命の移ろいを思わせるような雄大な楽曲が紡がれます。ともするとスピリチュアルや宗教的なテーマになってしまいがちなのですが、巧みな情景描写と緩急ある楽曲展開であくまで「エモーショナル」な表現が貫かれている点も好みなのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました