2000年代初頭の等身大のテクノサウンド「スーパーカー/HIVISION」

MUSIC


97年に青森からデビューした「等身大」なバンド


スーパーカーは1990年代後半にデビューした業界では98年の世代(97年の世代と言われる事も)で括られる事もあるバンドです。この時期にデビューして後進のミュージシャンやバンドに大きな影響を与えたと言われる、中村和義やくるり、そしてナンバーガールや椎名林檎あるいは、あるいはドラゴンアッシュあたりまでも含めて語られる事も多いようです。


それぞれサウンドに共通点はないのですが、それまで日本で活躍していた著名なバンドとはサウンド面で一線を画していた新世代…みたいな括りでしょうか。まさに日本で一番CDの売り上げが盛り上がっていた時期で、渋谷系で括られる都市型の音楽文化も既に形成されフジロックなどの国内フェスが立ち上がり始めた黎明期です。


当時メジャーシーンで活気づいていたのは小室哲哉プロデュース主導のダンスミュージックをベースにしたガールズポップ。バンドサウンドでは80年代ニューウェーブやビートロック、あるいはアメリカで勃興したオルタナ・グランジサウンドをベースにしたヴィジュアル系で括られるバンドのセールスが一世を風靡していました。


それらある意味派手で煌びやかなメジャーシーンのイメージと対比するとスーパーカーはもっと等身大
でいかにも当時の都会の片隅にいる若者然としていた佇まい。それは詩曲にもよく表れていました。当時のメジャーばバンドで例えればミスチルやspitzとのイメージにも重なるのですが、サウンド的にはさらに内向的。


現在までつづく郊外型の世界を綴る内省的な詞世界


ボーカル中村浩二の低音でささやくようなボーカルと、それと対を成す高音でポップな性質をもつ、フルカワミキのツインボーカルも特徴でした。そのスタイルはイギリスで90年代初頭に巻き起こったシューゲイザーと言われるジャンルも髣髴とさせるものでした。

実際にノイジーなギターサウンドやエコーがかったボーカルスタイルはシューゲイザーと共通する点も多いのです。それがその前世代のギターバンドとの個性の違いにもなっていました。


それ以上に斬新だったのが後にチャッモンチーなどのプロデュースも手掛けるギターのいしわたり淳二のてがける詞でした。90年代後半と言うともはやバブル経済も通り過ぎ、欲しいものはなんでも揃う、しかし変わり映えのない変化のない日常が延々とつづく、令和初頭までつづいたデフレ経済やそれを取り巻く日常の風景が既に行きわたっていた時代とも言えます。

社会学者宮台真司の言う「終わりなき日常」の世界、エヴァンゲリオンがカタストロフィ後の第3新東京市を心象風景的に描いた「セカイケイ的」世界観とも薄っすら共通しているものだと思います。

携帯やスマホの普及などの変化はあれ、若者を取り巻く郊外の風景はこの当時からほとんど変化することなく20年以上はつづいていったものと思えます。そんな変わり映えのしない未来を見据えた、どこかクールで諦念に溢れた当時の若者のリアルな情感を男女の視点を入れ替えつつ、等身大の詞にのっけて歌っている。これが新しかったのです。

クールな諦念を低音の男性パートで、ポップな前向きさを高音の女性パートで、という使い分けも巧みでした。この両極端なサウンドの振れは詞が大幅に解体された中期~後期でも一貫されていました。


そしてまた現在に至るまで、等身大の若者心理をここまで絶妙に表現したバンドは珍しいかもしれません。


当時の世界の潮流とも一致するサウンド面の変化と充実


そして、そういった楽曲の雰囲気を徐々にエレクトロ(電子音楽)よりに接近させていったのが中期~後期の特徴。このサウンドの変化は当時UK(イギリス)で最先端を走っていたRADIO HEADなどの変化と歩みを同じくするもので、長らく洋楽的なサウンドを数年遅れで影響を受ける流れに留まっていた日本が、ついに洋楽との同時代性を確保した、なんて言われることも多かった頃ですね。

ほぼ偶然の一致だとも思うのですが。。そして、本作HIVISIONに行きつく後期ではサウンド的には、完全にエレクトロ寄りになり初期ではきちんと起承転結があった詞は、解体されて添え物程度の分量になっています。


言葉を追求し続けると、それが解体されてイメージを膨らませる程度で良い、といったメンバーの解釈もあったようですが確かに初期スーパーカーの持つエッセンスは詞の中にもわずかに息づいていますがサウンドがよりそれを増幅させるような作りになっている気がします。


アルバムの流れでみると前作フューチュラマのややビッグビートより?のサウンドの方が好みなのですが個々の楽曲の完成度は本作が上回っている気がしてます。聴いてて気持ちいいんですよね。当時のテクノや音響系に属するアーティストがレコーディングに際して関わっている事からサウンド面の充実は図抜けており、後に映画ピンポンや交響詩篇エウレカセブンなどでも本作の楽曲が繰り返し使用されたりしています。

中期~後期のスーパーカーの一番分かりやすい面を表したアルバムですが、本作を聴いて気に入ったら、テクノよりながら本作よりも楽器が前に出ている3rdフューチュラマや、ほぼ別物ながらシューゲイザーとして台頭したルーツとも言える1stスリーアウトチェンジ。その1st~ラストアルバムまでの変化をよりメンバーが表現したかったコアなサウンドで、緩やかに辿っていける解散後に出されたB面ベスト盤「B」などをお薦め致します。

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