80年~00年代にかけてのJ-POPサウンドの見本市のようなアルバム「TM NETWORK/TMN CLASSIX」

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80年代後半~2000年代前半にかけて、シンセサウンドとバンドサウンドを掛け合わせたようなPOPS、いわゆるJ-POPといわれるサウンドが全盛の時期がありました(J-POPが何を指すかは諸説ありますが…)そんなJ-POPのルーツにして見本市のようなアルバムが本作です。


J-POPの礎を築いた先駆的ユニットTMN


小室哲哉が在籍しているユニットとしても有名なTM NETWOEK。その歴史はJ-POPの礎といっていいのかもしれません。洋楽的なものが徐々に浸透していた80年代にバンドではなくメンバー3人以外のバックメンバーは用途に寄って入れ替わるという事でユニットという斬新な形でデビュー。


洋楽で流行っているジャンルをいち早く取り込んでまずシングルとしてリリース。それをアルバムの軸にする展開や、スポンサー・タイアップを踏まえたアルバム単位の展開。3枚同時リリース展開、全編の曲調をガラっと変えてしまうリミックスという概念、当時のメジャーシーンではまだ浸透していなかったコンセプトアルバムの提示。


ビデオや書籍と連動してメディアミックス展開。三者三様のソロワーク、音楽業界初のネットオンリーでの販売(DL含む)。活動期間中のバンド名の変更(TM NETWORK→TMN)、ファンを独特の名称で囲う(FANKS)などなど。またデビュー当時はプロモーションビデオ黎明期でそれを積極的に活用したり、当初はビデオのみでのライブ展開を想定したりもしていたようです。


これらは当時のテクノロジー的な限界、マンネリの打破、セールス的な事情、ライブの本数が多く多忙でアルバムリリースが出来ない状況など、ほぼその時々のバンド側の事情が反映されて展開されたものでしたが、それを逆手にとって新しい方法を常に模索していった結果、90年代以降のJ-POPシーンでの展開に1つのスタイルを明確に示したようなグループだったのではないかと思うのです。


サウンドの確立と影響力


実際に彼らが全盛期に形にしたサウンドはシンセ、エレキをメインに構築された疾走感ある歌モノというサウンドはその後サポートメンバーから派生したユニットB’z、aceess、T.M.revolutionやメンバーである小室哲哉自身が移籍したレーベルavexにいた時代にTRFやglobe、EVERY LITTLE THINGなどによって普及し、未だに1つのスタイルとして定着したものだったのではないかと思っています。


そのシアトリカルでナルシスティック??な演出はヴィジュアル系方面への影響もあったはず。またメンバーである小室哲哉は作曲家・編曲家として平成の時代で1番稼ぎ、その文法を学び実践した松本孝弘はB’zでやはり平成に時代一番稼いだグループともなりました。


しかして、そのスタイルは当初は当時の欧米で一世を風靡したニューウェーブ的スタイルを基調にしながら欧米で流行っているジャンルをいかに日本人好みにアレンジし、流通させるか、がテーマともなっていきました。


その一方で、シンセをベースにしたサウンドはYMOから3人の奏でる絶妙なコーラスワークとSF的な世界観はTHE ALFEEから、ダンスを基調にしたステージングはREECCAから、ブレイク時の黒を基調にした衣装やナルシスティックなステージングはBOOWYを思わせ…

また尾崎豊が青春をテーマにしたメッセージソングで人気を博せばそのようなメッセージ性をSFを軸にした世界観はそのままに内包していったりと80年代のバンドやユニットからの影響をモロに受けた見本市のようなものでもありました。


そして、シンセをベースにしたサウンドと、アルバム単位でメインのジャンルを次々と変えて行きながらもその転調の多い楽曲は一種のプログレといってよく、一貫したものとしてシンセ+プログレが基調のサウンドであったと思います。ともかく色んな意味で80年代→90年代を回顧させるユニットなのです。


さまざまなベスト盤の中から…


J-POP市場では古くはXやYMOと並んでベスト盤の数が多い事でも知られるTMN。現在でもメンバ公認、メンバーが関与せずレコード会社が勝手にリリースしたものも含めれば無数のベスト盤のあるグループなのですが…個人的には彼らがもっとも精力的に活動していた最初の10年のうち初期を代表するベスト盤として企画盤になりますがTHE LEGENDで…ニューロマンティック色の強い初期と後のダンス系の楽曲がバランスよく並んでいるのです。


中期を代表するものが最初のリミックス版であるDRESS…初期~中期の名曲が洋楽風のサウンドで生まれ変わっていますがミディアムテンポの楽曲はセンス良く、アップテンポの楽曲は勢いを落とさず的確なリミックスがなされています。このアルバムは参加メンバーも超豪華なのも特徴。

そして、それら初期~中期の楽曲を踏まえてTMNとバンド名を変更してからの楽曲を中心にまとめられたのが後期ベストとも言えるものが表題に記した「TMN CLASSIX」になります。


個人的にはメッセージ色の強い楽曲と、ミニマルなリズム主体でグルーヴ感重視の派手な楽曲が並ぶこれぞ彼らの真骨頂。TMN時代と小室プロデュース時代をつなぐJ-POPの王道のようなアルバムだと思っています。


avexサウンドとTM NETWORKの狭間で


彼らがこれ以前にリリースした前述のDRESSというアルバムは彼らの楽曲を海外の有名プロデュ―サーの手で生まれ変わらせたものでしたが、こちらはメンバーの小室哲哉の手によるRIMIX。最も代表曲であるGET WILDはDRESSでアレンジされたものをさらに音を被せてあるためリミックスの上のリミックスという流れにも…


それ以外にミュージカル風のアコースティックな楽曲が売りのCAROL期からはSEVEN DAYS WAR、COME ON EVERY BODYなどハードロックに挑戦したRHYTHM REDからは69/99とTHE POINT OF LOVERS NIGHTにハウス調の楽曲に挑戦したリカットシングルのRHYTHM RED BEAT BLACK、ユーロビート調のDIVE INTO YOUR BODY、それに連なるGET WILD89ベースのリミックス。。


TMN時代の名曲と名高いWE LOVE THE EARTH、LOVE TRAINにWILD HEAVEN。またミディアム調のHUMAN SYATEM、あの夏を忘れないがシンセベースの印象的なアレンジで収まっています。ファンにはお馴染みの木根バラもGIRL FRIENDやTIME PASSED ME BYなどが収録。


彼らの楽曲は特に、ダンスやバンドサウンド寄りになったものほど機材やテクノロジーに左右されやや時代を感じさせてしまうものもあります、そして、これもこのユニットの特徴としてそれらを都度ライブで大きくアレンジしていくことが魅力でもありました。


そのライブでのテンションを当時の勢いのままスタジオ版としてパッケージされた感もあります。その上で普遍的な魅力を放つバラードは手を加えず収録。従来の曲に音を被せるオーバーダブという手法をメインにリリースされたため手抜きベストだとの批判もあったようですが、低音を利かせたアレンジは今聞いても気持ちいいものです。


そして、これだけ多彩なジャンルのサウンドを個性を持って形にし、統一感を持って納められているのはなかなかに凄い。TKサウンドの80年代と90年代を跨ぐ、そして後の時代にも繋がるJ-POPの記念碑のようなアルバムだと思うのです。

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