いまだに色あせない普遍的なRPGの面白さを提供した3作目
日本におけるRPGの歴史を築いたとも言えるドラゴンクエストシリーズ。特に3作目はちょっとした社会現象にもなり、日本の本当の意味でRPGブームを巻き起こした立役者と言えるかもしれません。
このドラゴンクエスト3は未だに無駄な要素の入っていないシンプルなRPGとして1つの完成形とも言えるスタイルになっています。それはプレイヤーがキャラクターの性別や職業を自由に作れ、自分好みのキャラクターで冒険できるというもの。
RPGの源流となるウィザードリィでお馴染みのスタイルですがこれを、シビアなゲームバランスで主観視点で進むダンジョン探索型のウィザードリィ型ではなく、見降ろし型のRPGとして展開した著名なタイトルとなると未だに本作の名前が真っ先にあがるためです。
日本のRPGの礎を築いたドラクエの流れ
もともとアクションゲーム主体だったファミコンのジャンルにコマンド選択型アドベンチャーという
文字文化を最初に持ってきたのが、ドラゴンクエストのディレクター堀井雄二氏でした。
もともとコマンドを手で入力していたパソコン型のアドベンチャーをあらかじめ用意された選択肢の中に込みこむ事で、よりユーザに分かりやすく寄せた「コマンド総当たり型」というスタイルをファミコン初のアドベンチャーとも言われる「ポートピア連続殺人」で提示したのです。
国産家庭用RPGの草分けともなる「ドラゴンクエスト」の普及とともにファミコンにテキスト型のスタイルを流通させた立役者と言えるかもしれません。
そして、その頃に海外に置けるRPGの火付け役となった「WIZARDRY」にはまりこんでいたのが作曲家のすぎやまこういち氏やジャンプで鳥山明の編集者をしていた鳥嶋和彦氏。
鳥嶋氏を通じて、ジャンプの誌面で大々的に特集をし、キャラクターデザインに鳥山明を投じて完成したのがドラゴンクエストでした。
日本人に馴染みのないRPGを紹介するのにジャンプは最大の普及媒体になり、また1作目はRPGの要素にアドベンチャーの会話型をメインにおいた日本独自のスタイルが濃い形に収まりました。
2作目ではパーティ―制を導入。しかし納期の関係でゲームバランスが非常にシビアなものにも…とはいえ、1作目で100万本、2作目で200万本とシリーズを重ねる事に順当にセールスを上げていったのでした。
前史となる海外RPGからの流れ
そして300万本を突破した本作ではマスコミにも大きく取り上げられ…この時期にはファイナルファンタジーや女神転生など後にライバルとなる和製RPGの多くが1作目をリリースされた時期。
そしてこれら日本のRPGの多くがRPGの源流となるWizardryの流れを踏まえていたものでした。WizardryはテーブルトークRPGという、今のRPGの源流となるボードゲームの流れを汲んで形作られたゲーム。
最初にパーティーを酒場で組む際に職業を選択でき。それぞれの職業の特徴を生かして成長していく、手強い敵や罠が潜む迷宮を少しづつ探索し、マップを埋め、またレアアイテムをゲットするなど収集要素に優れたゲーム。最終的には上級職に転職するという楽しさもありました。
多くのフォロワーを産み出し、特に一作目は未だに根強いファンに支持されています。そのWizardryもこの時期に豪華スタッフによってファミコン版がリリースされています。
ドラクエ3はスタイルとしてこのWizardryの職業性と、見降ろし型RPGの源流であるウルティマを本格的に融合させ街での会話などアドベンチャー性を重視した作りとして、大成した形なのです。
確信的だったそのスタイル
ドラクエはその職業を選べる以外にも革新的なものは数多く、ストーリー中盤ダーマ神殿で転職が出来るようになる要素がその1つ転職をするとレベル1になってしまうものの、それまで覚えていた魔法やパラメーターは引き継がれるため攻撃魔法・回復魔法に優れたキャラクターや攻撃と素早さに優れたキャラクターなどを産み出す事が出来ます。
また当時のゲームが取り込みだしていた時間の経過の概念も取り入れ、フィールドを歩いていると夜になり魔物の出現率が上がると同時に、街に入れば昼間では聞けなかった攻略や隠し要素に連なる情報を仕入れられるなどの変化があり、このあたりはディレクターの堀井雄二氏がもともと手掛けていたアドベンチャー要素の流入とも言えるでしょう。
世界を一周できる空飛ぶ乗り物、魔王の裏に潜むさらなる魔王の存在の影。別に存在するらしきもう1つの世界の存在。船を中盤で手に入れると攻略ルートを無視して進められる自由度などこの当時では革新的だった数々の要素を取り入れ、まさに和製RPGのスタンダードを3作かけて形にしたと思えるものに出来になっていました。
シリーズの伝統を踏まえた演出
そして、未だにシリーズ最高傑作とまでいわれる所以はリアルタイムでシリーズを遊んでいたであろう当時のユーザーを驚かせた終盤の展開でしょう、1作目2作目と来て、そして伝説へ…というタイトル。BGMに寄る演出。ゲームスタート時点ではこれまでの作品との繋がりが明確に示されない訳…など
ストーリーと言うかゲームの構造でプレイヤーをあっと言わせる流れが見事でした。とはいえ、ドラゴンクエストのこのスタイル時代はその後のシリーズは元よりファイナルファンタジーシリーズなどに発展継承されたものが多く、今となっては特別なものばかりではないのです。
それでも尚、変わらない本作の普遍的魅力は「シンプルなキャラクターメイキングが出来るRPG」という、この一遍に付きます。街を拠点にしてダンジョンを踏破する最初の段階では苦戦するもののそのままごり押しで先に進むか戻って装備を整えるか…この先に行くか引くかのバランスが絶妙なのがドラクエならではのゲームバランスの旨味。
リソース管理の楽しさと言ってもいいかもしれません。ダンジョンも適度にプレイヤーを迷わせる構造になっています。適度な所で引き返せば装備も整いレベルもあがり余裕を持ってクリアすることが出来る。そして、何個かに1つ難関と思われるダンジョンが設定されている。
時代が変わっても、ドラゴンクエストはこの基本は貫いており、そのゲーム性はウィザードリィに通じるものがあり。それを見ろし型としてユーザーフレンドリーに寄せた作風と言えるでしょう。
魔王vs勇者というあまりに王道の展開こそ、いまとなっては「ベタ」な範疇に収まっているのですが、下手にテキストやイベントシーンで多くを語らない事で、妙な時代性を感じさせて興ざめするという事が少なく音楽と演出、最低限のテキストでイベントやシーンを演出している点も素晴らしいのです。
何よりシンプルなキャラクターメイキングであるがゆえに「普遍的な」RPGの魅力を放っているのがこのドラゴンクエスト3だとも言えます。
そして、後にSFCでのリメイクに当たってはドット絵最高峰のグラフィック、オーケストラ調で蘇ったサウンド盗賊という追加職業やキャラクターの育成に影響する性格などの要素が追加されました。
モンスターのアニメーションや手持ちアイテムを複数持てる「袋」の存在、コマンドを一発で実行してくれる便利ボタンの導入など、シリーズを重ねた便利な機能もフィードバックされまさに、まさに完成形とも言える出来に仕上がっています。
現在、遊ぶには…
時代に埋もれない普遍的な魅力に溢れた本作。戦闘のアニメーションがなくなるなどやや劣化した面があるも現在アンドロイドやswitchなどでもプレイ可能で、HD-2Dという最新の技術で当時の雰囲気を壊さない範囲でのリメイクも進められており2024年末、究極版とも言えるHD-2D版がいよいよリリースとなりました。
最近のRPGにあるようなキャラクター間のドラマや、会話劇などの派手な演出こそないものの。好きなパーティ―編成を考えて自分の頭でロールプレイしていく普遍的な魅力は、今なお通用するものではないかと思っています。
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