ギャルゲー全盛期に登場した異色の会話型ゲーム
最近は生成AIの発達で、AIとより生身に近い対話が出来るようになったり。また別の面ではスマホを使ってLINEなどのSNSを扱うコミュニケーション自体が1つの娯楽となっている面もあると思います。
ゲーム業界の歴史もながいですがこの「コミュニケーション」にひたすら拘った、非常に魅力的なタイトルがあるのです。
女の子(というか異性?)と仲良くなって恋愛を楽しむのもシミュレーションゲームの1つの特徴ですが。そんなSNSやAIの発達した現代を先取りしていたような、そして今尚通用する要素に満ちた忘れられない個性を放っていたのがこのNOELというゲームです。
コンセプトからゲーム性から独自性の塊でインターネットの黎明期であった発売当時ではなかなか理解されず賛否別れるタイトルであったと言われます。発売はいまは無きパイオニアLDCです。
独自のOSで展開されるスタイリッシュな会話型ゲーム
本作の凄い点はまず世界観の構築。当時から見た近未来という事でヴィジュアルフォンという会話型ビデオ通信が一般化した世界。今日でいうLINEやZOOMに当たります。また独自のOSで起動させるコンピューターを駆使して会話を進めるという設定ですがこの架空のPCの中に通話機能、メール機能、ビデオ機能が納められていて女の子達と仲を深めるとメールやビデオレターが送られてくるといった設定。
マシン+女の子というひと昔前のオタク要素満載の内容になっています(笑)しかし、このヴィジュアルフォンのOSが非常にスタイリッシュで、舞台も架空の臨界都市という事でリゾート感覚に溢れています。初期PSが目指していた大人の雰囲気も漂っていて、ギャルゲーでありながら、マニア臭さを相殺しているのです。
ただこのOSの挙動を制御するというやや面倒な設定があるのとゲーム開始時ではどう進めていいか手探り感も強く、このあたりが慣れないユーザーを戸惑わせる要因になっているのが悩ましい所。
今見ても目を見張る、豊富なアニメーションと会話パターン
初代Noelの魅力はまずアニメシーンの圧倒的なクオリティ。屋内で話す場面のみに絞ったおかげで女の子の動作やアニメパターンが大変豊富、何気ない仕草も違和感なく仕上がっています。動画枚数も相当多かったよう。
この自然な感じのアニメーションは、続編などでも同じクオリティに達していないため(場面展開が増えたためか)本作ならではの強みとも言えるかもしれません。同様に会話パターンも膨大で、日常の愚痴から些細な話題まで本当に会話しているような感覚が実感できます。
こちらからの話題は女の子との会話中に会話の内容がボール型のアイコンとして画面下の排出されるのでそれを画面中にストックし、会話の最中に適切なタイミングで投げる事で話題に繋げます。
個別のキャラから別のキャラの話題に触れる事もあり、それによってキャラを跨いで会話を引きだすという流れもあったり。3人はそれぞれ会話の間や性格が異なるので同じテンポで会話が出来ないため、それぞれの会話のリズムを掴む事も必要。。
ビデオ通話はこちらからかける形になりますが、相手の時間を無視してかけると友好度が下がったりもします。
コミュニケーションを学べるゲーム
こうして見ると本作は会話シミュレーターの側面が強い事に気づきます。この時代、人口AIに動作を覚えさせるというコンセプトの「森川君2号」や会話を覚えさせることを目的にした「シーマン」や「どこでもいっしょ」といったタイトルがありました。
本作は言ってしまえばCD-ROM媒体に収められた人工知能(?)と会話をしながら仲良くなるゲームだとも言えます。3人登場するヒロインは、オタク語りをすると止まらなかったり、今時の女子っぽい会話だったり、極端に無口で大人びていたりと個性がバラバラ…ただいかにもアニメ的な都合のよいキャラには収まりきっていないためどこか現実的な面倒臭さと隣り合わせの魅力も備えたキャラクター。
うまく繋がらない会話に時にモヤモヤしながら、間を読んで話題を繋げていく過程はまさに現実のコミュニケーションと同様。相手の話を聞きながら、適切なタイミングで話題を振る。コミュニケーションのリズムが学べるゲームでもあるのです。同じシステムで男性版とか、キャラクターものとか色んなバージョンに発展できそうな余地もある気がします。。
また基本は相手の会話を聞く事に徹したゲームですが、こちらからもある程度文字を入力して話題を投げかけられればよりゲーム性も増した気がします。当時の容量では難しかったでしょうが現代であればある程度かいつまんだ話題を自動生成して、データ上の組み合わで違和感なく会話が戻ってくるという流れも実現できそう…
時代に埋もれない魅力とは
ズバリ本作の時代に埋もれない魅力とは、多くのこの手のゲームが未だコマンドやアイコンを軸に進めて行くものが多い中、ベースを架空のOSと会話を中心に置いた独自性。
時間進行と言ったリアルタイム性を重視したゲームも後に増えていきましたが、ここまで豊富なアニメーションや会話パターンを収めたゲームは稀でしょう。そしてキャラクターデザインやOSまで時代によって古びた要素がないというあたりでしょうか。
この内容が1996年当時に実現していたというのも脅威です。たぶん、YOU TUBEなどの動画だけ見てもなかなか良さが伝わらないタイトルでもあります。是非、一度手に取って本作独自のコミュニケーションを楽しんで欲しいのです。
現在遊ぶには…
本作はPSのゲームアーカイブスに配信などもされていましたが、ゲームアーカイブス自体がPS3、PSP、PS VITAと言った1世代前のハードしか対応できていません。ゲーム自体もディスクの入れ替えなどもある為、パッケージ事態を購入しPS2あたりで遊ぶのが最も遊びやすい方法かと思います。
中古価格も1000円を切る価格で入手できます。
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