浦沢直樹の代表作の1つ
青年誌で話題作を多く描いて、国民的作家の1人である浦沢直樹。MONSTERや20世紀少年、アニメ化もしたYAWARAなどが有名ですが…基本的には美少女をフューチャーしたスポーツもの、もう一方の軸がサスペンス的な漫画で、この2つがこの方のメインの作風と言っていいのではと思っています。
そして、原作者を有し主に80年代後半~90年代半ば。昭和~平成に移る時期にビッグコミックオリジナルで長期連載されていたのが本作マスターキートンでサスペンスを軸にアクション・ミステリーと色んな方向に主旨が向く漫画です。
古くからの浦沢ファンは、この作品こそ最高傑作にあがる声も多くまた各種漫画ランクのようなものがあると未だに根強く名前があげられることもある作品です。
アニメ化もされた有名作ですが、著作権の関係からか一時期長らく絶版していた経緯がありまし
た。そのため、作者の作品の中では一般的な知名度はやや薄い気がしますが、とにかくその人気・評
価は根強いモノ。
2010年頃に完全版として復活、また両面見開きという作者の拘りを通したうえで電子書籍もされ
現在は大変手に取りやすい環境になっています。個人的には基本1話完結型の漫画としては漫画誌に残る名作の1つ。各話の濃さや込められた要素の多さ、話のまとまりから個人的には一番読み応えのある1話完結型の漫画だとも思っています。何が本作の魅力なのでしょうか??
1話完結系漫画の金字塔的作品
まず原作者を置いていた作品である事の強みでもありますが、先に触れたように話の展開のさせ方
の枠が広いのです。主人公の平賀・キートン・太一は大学の教授をする傍らオプという世界を又に書けた国際的な保険会社の社員。そして、かつては軍隊に所属していた一流のアーミーとしての腕も持っています。
ちょっと出来すぎた主人公のような気がしますが、この設定により世界のどこを舞台にするのも違和
感がなく冷戦の最中でもあった連載当時の時代背景もあり、国際紛争を背景にスパイアクションさながらのアクションが展開される話
考古学のようなロマンあふれるミステリー、時にホラー仕立てに展開する話。意外な人物が裏で糸
を引いているミステリー…そして、人と人が紡ぐ人間ドラマなど実に話が多方面に展開し、そしてそれが違和感なく納められるようになっています。
これら雑多なテーマをまとめるには相当な知識や緻密な取材などがいるはずなのですが、それらをしっかりモノにしている事と、浦沢直樹による線は多くないもののキチンと外国人は外国人に見え、さらにしっかりキャラクターの見分けが付けられる画力(いわゆる漫画の絵として完成した力)が加わり、実に魅力的で読み応えのある漫画に仕上がっています。あえて近いものをあげるなら世界的にヒットしたドラマX-FILEでしょうか。
ただ扱う題材が超常現象や怪事件にまつわるものではなく、どちらかと言えばミステリーの枠に収まる事件が多いのが本作の特徴かもしれません。またそれらが嫌味ない話の顛末に収まっており(すべてのエピソードがその流れになる訳ではないですが…)に繋がり基本的に読み終わって嫌な気持ちを残さないようになっている点も秀逸です。
長編連載漫画のような派手さや大きく動く展開ではないのですが、短く丁寧にまとまった小話が、15巻程度の全編にぎっしり詰まっています。様々な知識が身につくロマンとミステリーに溢れた作品さらに付け加えるならちょっとアカデミックな知識や興味が身につくのもポイントかもしれません。
毎回、世界各国が舞台になり、漫画の中でその歴史や過去の事件、あるいは遺跡などに話が及ぶことが多く、読みながら様々な知識(いわゆる教養)が身についてしまう漫画でもあります。
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