いわゆる仮面ライダーと言われる作品は東映のドル箱で現在もシリーズが絶賛継続中です、しかし最新のものになるほど差別化や新しさとの融合から王道から離れていく事も多かったりもします。仮面ライダーは今までに何度か原点である最初の仮面ライダーに立ち返った作品を、テレビ作品やビデオ作品、配信作品、劇場版で何度か作られていきましたが、そんな「原点回帰」の王道の仮面ライダー作品の中で、いまなお決定版だと思っているのが本作です。
80年代までに積み重ねられた東映特撮のエッセンスの集大成
70年代東映特撮は、単身ヒーローものとして社会現象をおこした仮面ライダーを筆頭に人造人間キカイダー始め数々の作品を同時に制作し、やがてそれは集団ヒーローものとして開花し秘密戦隊ゴレンジャーなど、今日まで続く戦隊もののフォーマットとして確立。
その後単身ヒーローものとして、大々的にビデオ合成を取り入れ、素材の発達により主人公が纏う
強化スーツにメカニカルな衣装を施した、よりSF寄りのメタルヒーローシリーズなども展開。
これらの過程の間に東映特撮は殺陣を重視する大野剣友会から、アクロバティックなアクションを重視したJACへの移行…苦悩する人間ドラマ路線から、アクションで魅せる作風へ、一方で悪の組織側に内部抗争が起こったり主人公側がヒーローになる際に思い悩む展開を交えたり、中盤に強化イベントが挿入されたり、1話完結をベースにしながら合間に大河ドラマ的演出を盛り込む…など緩やかに現代にも繋がる様々な要素が付け足されていったのでした。
最初から劇場用作品としてゴジラなど劇場撮影で培ってきた特撮ノウハウがあり大々的なアナログ合成技術を有していた円谷に比べて、特別な合成技術は持たず時代劇や任侠映画のノウハウをテレビ特撮として徐々に作り替え、爆破やスタントで魅せる東映作品は、黎明期の作品を見るほどに試行錯誤の連続だったであろうことが伺えます。
そして、後の平成ライダーに到る頃には連続ドラマやより具体性を増した大河ドラマ的手法で、ドラマ性もまた高めていく事になるのですが本作、仮面ライダーBLACKはその手前の時代。アクションとビデオ合成、1話完結をベースにしていた時代の東映特撮のエッセンスの集大成を、看板作である仮面ライダーで大々的に展開したような作品に仕上がっていたと思います。
王道の怪奇アクションをスケール感を伴って展開
それは特撮部分との乖離をなくすため控えめに使われたビデオ合成、大胆な爆破やワイヤーアクションも交えた戦闘、メタルヒーローシリーズと同様のディティールアップした新しい素材によるスーツ。
戦闘員などを有さず生物的ギミックを強調し、人語も介さないリアルな怪人。特殊メイキャップでおどろおどろしさを重視したゴルゴム3神官、政治家や官僚、大学教授を幹部に従えているゴルゴムと言う組織のスケール感。親友と戦わざるをえなくなった主人公の苦悩、派手なフォームアップもなくシンプルにパンチやキックで戦う主人公ライダーのスタイルなど…
原点である怪奇アクションドラマに、メタルヒーローや戦隊もので培われたシナリオ展開やアクションに特撮までも惜しげもなく盛り込んであります。ライダーと怪人がシンプルに戦う王道の仮面ライダーとしては今尚、金字塔的な立ち位置の作品に当たるのではないかと思っています。
特に主人公が改造人間になる過程や敵組織の背景がそれまでのシリーズの中では一番はっきりと描写されているのが個人的にポイントが高いのです。
しかし、さすがに1話完結を何話をつづけるとマンネリもしていきますが(なので一番好きなのは序盤の雰囲気)中盤~終盤にかけて主人公の仮面ライダーBLACKと対をなす存在のシャドームーンの復活と対決にいたる流れを挿入し、このシャドームーンもまたハカイダーからつづく東映特撮ライバルキャラの決定版と言えるほどの存在感を放っていました。
いまなお、正統派な仮面ライダーの決定版となる
終盤まで大きな路線変更やフォームアップなどのイベントを交える事もなく1年間シリアスな雰囲気のまま完走したのは見事だったと思います。翌年、同じ主人公の強化版に2つのフォームチェンジ宇宙刑事を思わせる派手なアクション、系統の別れる各幹部が率いる多彩な怪人が属する派手な悪の組織、ホームドラマ要素の挿入、かつてのライバルキャラの復活に、唐突ではあるものの終盤の歴代の主人公の客演など…
いわゆるアクションヒーローものとして花開いた「2号ライダー路線」で、80年代を締めくくった続編「仮面ライダーBLACK RX」も放送されました。
こちらも特にアクション面での充実が素晴らしく今尚熱い支持を受けている作品ではありますが、やはりシンプルなスタイルや、怪奇アクションにしっかり比重を置いた点も含めこのBLACKの王道のスタイルが今尚、時代を越えた魅力を放っていたと思います。
2022年リブート版である仮面ライダーBLACK SUNもアマゾンプライムで公開されましたが、王道の怪奇アクションやテレビシリーズならではの良さでは本作を上回ることはなかったと感じています。。
仮面ライダーはしばしば、シン仮面ライダーをはじめ、劇場版やスピンオフなどで原点回帰を謳う作品を発表していますが時代的なものもあるのか、あるいはテレビシリーズと言う縛りがいい方に働くのか、王道の仮面ライダーとしてはいまだに本作の立ち位置が揺らいでいない気がしています。惜しむらくは主役俳優の一連のスキャンダルがあった事で、あれはちょっと悲しかったですね…
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