令和の現在でもホラーブームが起こり、世に怪異譚は溢れていますが昨今の怪異譚の源流の一つともなり、小説としても抜群に見ごたえのある傑作ホラーを紹介します。
平成的ホラーの原点とも言える傑作
あまりに劇場版が有名になりすぎ、貞子が最早ネタキャラの域に入ってきていますが…以外に原点である小説版のリングを目にした事が無い方も多いかもしれません。原作のリングは、ホラー小説に新風を巻き込んだ歴史的な傑作なのです。
作者の鈴木光司が理系の作家でらせん、ループと直接の後の作品になるほどSF的な方向に寄っていくのですが、本作に限っては純粋なホラー。刊行当時としては最先端、現在としてはアナログにも映るビデオという現代的な装置を媒介手段として拡散する恐怖を演出しました。
これは携帯やスマホといった平成以降のホラー作品では、ギミックとして常套化していく事になるのですが、その走りともなった作品です。
エンタメ小説としての構成の巧さ
本作では呪いによる期限があり、その期限までに謎だらけの呪いの根源を突き止めなければいけないサスペンス的な緊張感、呪いのビデオの薄気味悪い描写、そのビデオに示された断片的な映像を辿りながら呪いの謎が少しづつ解き明かされていく過程などホラー小説をエンタメとして成り立たせる要素の1つ1つのインパクトがよく練られています。
登場人物、浅川と竜司は劇場版では大幅にアレンジされており性別も変わっています…が原作では特に竜司の方は強烈なキャラ設定になっており、これもなかなかに印象深いのです(初見では嫌悪感の強いキャラですが)
先に述べたように本作が示した近代的な機器(本作に置いてはビデオデッキ)を媒介にした恐怖は、その後スマホのチェーンメールやSNSの画像など形を変えて、新しい恐怖を提供し続けています。そして、この「拡散」(感染)という要素は呪怨などの後のJ-ホラーの流れにも受け継がれていくのです。
劇場版はとにかく随所に挿入されるホラー的演出が出色でしたが、原作はミステリー的要素も絶妙に配置され、最後までグイグイ読ませる力を持っています。


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