再び鳴らされた夕景の世界「ZAZEN BOYS/らんど」

MUSIC

感情に重きをおいたサウンドが「エモい」という表現に置き換わって随分立ちます。バンドサウンド発のこのエモいを令和の現在、最も敏感に感じ取った名盤をレビューします。

世紀末~ネット黎明期に一時代を築いたナンバーガール

日本を代表するオルタナティブバンドナンバーガールを解散してから、フロントマンであり作詞作曲の多くを手掛けた向井秀徳が立ち上げた新しいバンドがZAZEN BOYSでした。

ナンバーガールは轟音オルタナバンドとして名を馳せつつも、情景描写に重きを置いた今日的に言う「エモい」表現を突き詰めていった最初期のバンド群の1つでもあり、そこに世紀末を挟んだ当時の日本の情景が何故かピッタリはまっていた、いわば時代の心理描写と絶妙にシンクロしていた側面もあったと思っています。

またメガネボーカルという存在感やとぼけたMC、80年代アングラシーンを彷彿とさせるPVや詞世界も魅力的で、まだまだネット黎明期でもあった当時にまだ元気だった雑誌文化やアングラな存在でもあったネット文化も後押しとなり、そのカルト的で熱狂的な人気にも繋がっていたように思います。

そういう意味では自然体で成立した最後の著名なアングラバンドだった…という気もしています。現在、同じような立ち位置で同じようなファン層を形成するのはなかなか困難な時代になっているでしょう。

再び蘇える夕景的無常

そんな流れでナンバーガールには個人的にも思い入れが強いのですが、ナンバーガール後期からZAZEN BOYSの流れで見られるHIP HOPのように韻を踏んだリリックやテクノに見られるミニマルサンプリングのような同じ音の繰り返しをバンド編成のリフと変拍子で表現する…という流れにはどこか乗り切れないものも感じていました。

それがZAZEN BOYS4からすとーりーずの流れで次第にシンセサウンドの導入でニューウェーブを思わせる流れも出てきて、途中ナンバーガールの再結成なども挟み実に10年以上ぶりにリリースされた本作。

そこでは再びバンド編成でのシンプルな音に回帰しつつ、どこか初期~中期のナンバーガールを思わせる「情景描写」に振り切っていて、久しぶりに自分の感性にビシビシ響いてきたのでした。

思えばナンバーガールの特にSCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICTやSAPPUKEIの頃に描かれた世界に妙に惹かれたのは、夕日に彩られた放課後や都市の情景描写とそこにシンクロした感情やノスタルジーな感情がベースにあったのは間違いありません。

人間関係としてのドラマよりも情景描写に心理描写を重ねたその詩世界も新しかった。その世界観に今一度、成熟したいまの感性で真正面から取り組んだのが本作と言えるかもしれません。

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