ポストアポカリプス的世界を描く詩的RPG「ニーアオートマタ」

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国産ゲームの特徴の一つにその斬新なビジュアルイメージの構築があると思います。洋ゲーで近年お馴染みになったヴィジュアルも、一頃は国産ゲーが描写して引き継がれたようなものも多く、また別の面では日本独自なカジュアルな画面構成などもその一つでしょう。

最近は国内外のゲームも、インディーズゲームも総合すると膨大なゲームが世に溢れ、ゲームエンジンの発展や生成AIの発達で美しいヴィジュアルこそ溢れるようになりましたが、一つ突き抜けたヴィジュアルセンスや作家性は後退してしまっている気もするのです。

そんな中ここ10年ほどのタイトルの中でヴィジュアルも世界観も、そして特異な作家性も際立った一作がありました。今回はそんなエッジの効いた感性溢れる一作をレビューします。

独自のヴィジュアルと感度の高い音楽

本作は初見ではそこまで惹かれる作品でもなかったのです。もともと前身となるドラッグオンドラグーンやニーアゲシュタルト/レプリカントが、発売当時は賛否が別れていた事もあり、無数にリリースされるタイトルに埋もれてしまっていた事。

次いで、ICOやワンダと巨像でお馴染みの上田文人作品に通じる光源の色彩を強く帯びたアート風のグラフィックも美しくインパクトはあるものの、前述の作品もありそこまで際立った個性には感じられなかったりもしました。

しかし、今もスピンオフであちこちに顔を出す本作の主人公2Bの銀髪モブに目隠し、ゴスロリ風のブラックコーデ、武器は日本刀でナイスバディ、基本感情を表に出さないアンドロイドというオウガバトルシリーズでお馴染みの吉田明彦氏が生み出した、中2病が凝縮したようなデザインが絶妙。これが国内外のヒットに繋がった一番の要因かもしれません。

そして、廃墟的地球の光景とコントラストを成すのが主人公達アンドロイドの設定。パーツを得て攻撃や防御を強化したり、突如戦闘画面がシューティング風の画面に切り替わったりもします(主に2周目以降になる9Sルート)

前提的にトリッキーな作りに

また一度戦闘不能になった場合、同じ場所まで出向いて時機を回収する事で記憶や装備を同期できるのですが、これはアンドロイドの設定を生かしたウィザードリィのロスト→回収の要素と同じ。80年代のゲーム文化へのトリッキーなオマージュも感じます。

そして、このゲーム、ストーリーの概要を掴むためにはキャラクターを変えて3周しないといけない。一周当たりにかかる時間はそれほど長くはないのですが周回プレイ前提という時点でなかなかにトリッキー。そしてベストEDとも言われるEルートのエンディングに到る流れもその結末もメタ的な演出まで絡めてかなりトリッキーなのです。

こういう演出はメタルギアソリッドなどでお馴染みの小島秀夫作品に通じるところもあります。なので、基本かなりコアターゲットに絞った作品にも思えるのですが、難易度は控えめで間口は広いのです。色んな時代のゲームの要素が盛り込まれているんですね。

プラチナゲームスが手掛けたという事で、簡単操作でスタイリッシュなアクションが可能な本作。チップでカスタマイズしていけば様々な攻撃方法が可能で、アクションが苦手な人でもオート機能で難易度を下げる事が可能です。

そんなエッジの効いた本作のディレクターは奇才とも言われるヨコオタロウ氏です。

空前の「エモい」ゲーム

個人的にそういった要素以上に本作を気に入ったのはやはりそのビジュアルや演出面。廃墟的なシチュエーションが非常に魅力的に描かれています。砂漠に埋もれた団地、廃墟となった遊園地、ロボットに支配された森の城や水没都市などなど。

岡部啓一氏らを中心にした制作会社MONACAが手掛けた楽曲とそれら情感豊かで幻想的なマップの数々。斬新なアートディレクションと哲学的な要素まで含んだストーリー展開はスクウェア・エニックスのかつての名作「聖剣伝説LEGEND OF MANA」や「クロノクロス」「ファイナルファンタジー9」を思い起こさせる点でもありました。

本作にあったような、儚い世界観や哲学的なストーリー、凝ったギミックに、メタフィクション的な演出はクリエイター色を強く打ち出し、実験作も数多く生んだPS1・2では国産ゲームのお家芸のような要素にもなっていました。

しかしハードが進むにつれ業界は再編され、ゲームも大作化していく中でそういった要素は徐々に萎んでいってしまった気がしています。そんな中PS4世代を代表するかのように高い支持を経た本作は、久々に…というよりもそれらの要素を全部込みで、新しいスタンダードを築いた感さえあります。

熱い支持を受けながらも、ゲームとしては前作にあたる「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」のリマスターが発売されるに留まっている本作。ヨコオタロウ氏のゲームとしての新作も途絶えてしまい、インディーズ界隈では活気を感じるものの、再び国産で作家性の強さや「アート」を感じさせる著名なコンシューマータイトルは途絶えて久しい感があります(このへんは人によって諸説あるでしょうが…)

そういった流れもあり、本作「ニーアオートマタ」は未だ色褪せない、斬新な輝きを今尚帯び続けているタイトルの1つとなっています。

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