時代を先取りした?不条理漫画の極北「神聖モテモテ王国」

BOOK1(漫画・小説)

不条理ギャグやパロディの多様に、歴史・アニメ・時事ネタを様々に混ぜたネット時代にこそ通用しそうな濃いネタの数々、そして昨今話題の考察系を思わせる謎要素を散りばめながら、藤子不二雄の居候モノのような日常ギャグとしてそれを展開した非常に濃いギャグマンガが、かつて少年サンデーに連載されていました。時代を先取りしたその魅力をレビューしてみます。


不条理ギャグマンガ全盛期にその極北をいった漫画


かつてはうる星やつらやタッチなどのラブコメで部数を伸ばしに伸ばしていたジャンプを
追撃する勢いのあった週刊少年サンデー。現在はかつてほどの勢いはないながらも、葬送のフリーレンなどの人気作をコンスタントに放つ、基本的には長期連載を丁寧にこなす堅実な作家を多く有する少年誌と言うイメージがあります。


この神聖モテモテ王国が連載されていたのは90年代末期頃で当時の看板作は現在もつづく名探偵コナンを筆頭に、からくりサーカス、犬夜叉、め組の大吾、ARMSなどが連載されていた時期だったと思います。


作者ながいけんはもともとオタク系雑誌ファンロードの常連から名をあげたようで、本作でも主に80年代のガンダムやロボットアニメを始め、SF、映画、芸能、政治、スポーツ、ゲームと各ジャンルを網羅する知識がネットが発達した現在で見ても素晴らしく

毎回テンプレートな展開ながら予想の斜め上をいくその展開は現在のギャグマンガで見ても異例なものだった気がします。


近い作風では同じギャグマンガで見ると当時ジャンプで大人気を誇っていた不条理ギャグの王道ともいえる「すごいよマサルさん」がありました。

こちらもまた80年代パロディのオンパレードや予想の斜め上をいく展開を交えながら関西ノリのボケツッコミを交えて、視聴者の入り口を広く持ってくるあたりは流石ジャンプだなぁと思わせるものがありました。


それに対して本作は半ば読者を突き放している面もあり(作者自身が対象年齢俺と称しているほど)そのあまりに濃いネタは、インターネットやスマホが普及するその後の00年代・10年代に様々なパロディやマッシュアップ、オマージュやお笑いの型が消費されていった平成年間を経て、令和になった現在ようやくおいついた面もあると思います(笑)


何度読み返しても引き込まれてしまう不思議な魅力


ストーリーはいたってシンプルで坊主頭に眼鏡で学ラン姿の記憶喪失の主人公オンナスキーと彼の家に居候している骨格も姿形もめちゃめちゃな宇宙人ファーザー(なぜか主人公の父親を名乗っている)


この2人がナオンをゲットするため街に繰り出し、ファーザーの考えるずさんな計画に基づいて様々なコスプレやキャラクターに扮し、ナンパを繰り返すも毎回破綻し最後はヤクザやチーマーに撲殺されるか、警察に連行されて終了。ここだけ見ると、いわゆる藤子不二雄の居候ものの変化形とも取れますね。

やがて、ライバルキャラとなる隣の部屋に居座る自称世界を征服しようとしている大王とその下僕たち、オタク風の出で立ちなのに女にモテまくるブタッキー、ファーザーのよく似た変人キャラのキャプテントーマスなどを交えながら、毎回に及び不条理なギャグが連発されていきます。


いっぽうでオンナスキーの記憶喪失やそもそも宇宙人を名乗るファーザーの存在など世界の謎のようなストーリー漫画的なラインも節々でほのめかされていましたが、その謎に大きく迫ることなくその濃すぎるネタを継続させることが不可能だったのか、ほぼ連載休止のような形で中断されたまま

数年後にヤングサンデーに6週のみ短期連載された作品をまとめて未単行本化のエピソードをまとめて7巻が発行されて終了。たったと7巻ではありますが掲載ページが少ないギャグマンガだけに連載エピソード自体はかなりの数でよくもこれだけ濃いネタを週刊連載で展開出来ていたな…と唸らされます。


いまでもたまに思い返して読み返すことも多い漫画ですが、ネタ的に時代を感じてしまう事が大いには仕方ないにしても(主に当時の時事ネタ)そのネタの鮮度はまったく衰えていない感じを受けます。

単行本の帯に当時のサンデーの連載作家のPRが載っていたりもするんですが高橋留美子のコメントにある様に、眠れない夜に見ると妙に落ち着いて眠れるような不思議な効果があり謎の元気ももらえます。濃さを理解できる方は1家に1シリーズ、置いておいても損はない作品です(笑)


その後作者は10年代に入り「第3世界の長井」という本作のキャラクターであるファーザーやオンナスキーも登場するより不条理を極めた漫画を掲載していましたが、こちらも現在中断している模様。

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