日本を代表する特撮ドラマ「ウルトラ」シリーズ。あくまで子供向けコンテンツとして制作されながらも本格志向のSFをテレビという新しい媒体で成立させたいと言う当時の若いスタッフの熱意と熟練の特撮ノウハウが合わさり、日本のドラマ史上に残るSF作品として今も熱い支持を受けています。
シリーズが進むごとに市場の要請もあり、次第にSFからヒーロー的な要素や人間ドラマを重視した作風に変化していきましたが、10数年のブランクを経て、その期間に作られた海外映画や国産アニメなどの影響も十分にフィードバックしながら、
新しい時代のヒーロー像の模索と同時に初期に立ち返ったような本格SF志向にも果敢に挑み、平成の世に蘇った新しいウルトラマン像を決定づけた名作をレビュー致します。
時代を超えて語り継がれる伝説の特撮シリーズ
昭和時代のウルトラマンは黄金期とも呼べるメンバーにも恵まれ、造形面、特撮面、脚本面それぞれで妥協を許さない制作姿勢が貫かれ、破格の予算がかけられていた番組でもあったそうです。
特に最初期にあたるウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンはもともとSFアンソロジーととして立ち上げられ、サスペンスやSFの趣も強かったウルトラQに発展的にヒーロー側のウルトラマンや防衛チームが宛がわれていき、時に人間ドラマに重きをおきながらも
徹底したSFドラマとして拘ったシリーズだったと言えます。
放送終了後50年近く経った今日でも、最新作を差し置いて、ここまで登場怪獣が認知されたり、当時の関係者の裏話や関連書籍が出版され続けている番組も珍しいでしょう。
人間ドラマとヒーローものの流れも汲んだ第二期ウルトラシリーズ
ウルトラセブンで一度シリーズが中断した後、SF以上に、作中の人間ドラマに焦点をあてた「帰ってきたウルトラマン」にて3年ぶりにシリーズが復活。
怪獣をこえる生物兵器「超獣」を従えてシリーズ初のレギュラー敵「異次元人ヤプール」の存在に加えそれまでの歴代ヒーローをウルトラ兄弟として客演させた「ウルトラマンエース」その流れを受けながら、ホームドラマやコメディ色も交えて、より派手な作風で彩られた「ウルトラマンタロウ」スポ根やオカルトなど、当時の時代性の流れも取り入れたハードな異色作「ウルトラマンレオ」など
第二期ウルトラシリーズが作られていく事になります。仮面ライダーなど競合する特撮番組の影響も受けながら徐々にSFと言うよりもヒーローものとしての展開が強くなっていく事になります。
とはいえ特撮技術や画面の画作りは一貫して拘りが続けられ製作費が嵩み、それゆえにシリーズとして幾度かの休止期間を挟む形になります。
後にアニメ作品「ザ・ウルトラマン」につづいて実写特撮の新作「ウルトラマン80」が放映、スターウォーズなどのSFドラマのブームの煽りと当時の社会情勢から教師物の要素も含んで、円熟期にあたる特撮技術も惜しみなく盛り込まれた作品になりましたが
制作側の事情や時代性、膨大な製作費がかかる特撮番組の宿命など諸々の事情で以降は長らくTVシリーズは中断…海外制作の1クールのビデオ作品「グレート」「パワード」が作られるに留まっていました。
満を持して登場した平成初のウルトラマン
そして国内の連続TVシリーズとては16年ぶりに復活したウルトラマンとなったのが本作「ウルトラマンティガ」でした。
その間に海外ではCG主体のSFやアクション映画が勃興、国内ではリアルロボットアニメを始めとしたSFアニメが流行り、複雑な人間ドラマやリアリティとの融合が図られていました。
国内では復活したゴジラシリーズなどが年末恒例の興行の1つとして定着していた時期です。まずCGを効果的に使って予算を制限、まだ過渡期のCGだったため正直画面との違和感を感じる面も多かったですがフィルム主体の映像と併せて、実写のみでは無理だった表現も可能になり緊張感ある絵作りに成功しています。
そして、当時の潮流に合わせて作られた斬新な設定が際立っているのです。それまでのウルトラシリーズは同じM78星雲という惑星出身のウルトラマンが登場する同一の世界として緩やかな世界観の共有がされていましたが
本作ではその設定を一新、舞台を当時からみた近未来に設定し怪獣などもすべて新規のものとなりました。
新しい魅力と引き継がれたもの
基本1話完結ながら、何度かに跨って展開される連続したエピソードを挿入し、丁寧な人物描写や大河ドラマ感のあるエピソードを作る事にも成功しています。
また新しい要素としてクトゥルフ神話から取り入れられたホラー的側面も強くなり、集団真理の恐ろしさを説いたようなエピソードも見られます。ウルトラマン=光の巨人がPDF=防衛組織により、その存在は人類によって敵対するものか味方なのかを問われる展開も序盤~節目に挿入され、リアリティ重視の作りにも抜かりがありません。
一方で妖怪や人外の存在との共生をハートフルに描いた作品や、切ない結末に到るSF的なエピソード、子供を主役に置いたようなどこか昭和を思わせるエピソードも散見されます。
それは初期ウルトラシリーズの中でもウルトラマンが持つ牧歌性やファンタジー的側面
ウルトラセブンが持つミリタリーやサスペンスやハードSF的側面、帰ってきたウルトラマンに見られる隊員間のドラマや恋愛模様、市井の市民から見た視点=人間ドラマなどが絶妙に混ぜられた作風になっています。
シリーズの伝統に決定的な新しい風を取り入れた魅力
そして、何より扱ったのが終盤の展開です。それまでのウルトラシリーズの伝統として
主人公は最終的に自分の正体を明かし地球から離れる、ヒロインとは何らかの形で悲恋になるというジンクスがありました。
この展開を最終的に力技で打ち砕いたのが爽快だったのです。またウルトラマンでは最終エピソードはドラマ面を強調するために敵キャラの存在が脇に置かれてしまうものも少なくなかったのです。
そこで本作は最終エピソードを3作連続で描き、その存在も強敵であると同時に序盤からその存在がうっすら仄めかされる形になっていました。
3つのフォームチェンジを効果的に使い分ける新世紀のウルトラマンというスタイルと同時に提示されたこれらの展開はこの後、つくられていく平成ウルトラマンでも引き継がれていくようになりましたが、最も最初の作品にあたるティガが一番、バランス良くおさまっている感があります。
初期のエピソードに若干の手さぐり感は感じるのですが、昨今の作品と比較しても色褪せない完成度。平成初期作は通年で作られた3部作として、ティガ・ダイナ・ガイアでまず括られる事が多く、どれも挑戦的且つSF的魅力に溢れた作品になっています。
その中でも書作のティガは非常に丁寧に作られたバランスが魅力。まさに新時代を感じさせる傑作となっていたと思います。

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