時代を越えたクラシカルな魅力…特撮番組の金字塔「ウルトラセブン」

映像(アニメ・映画)

国産の人気ドラマは数あれど放送から何十年も経っても現役作品を凌ぐほど未だに関連書籍や話題に事欠かない普遍的な名作があります。今回は、そんな1作ウルトラセブンのレビューです。


ウルトラセブン、その作品シリーズのの位置づけ


庵野秀明が脚本を書いた事でも話題となったシン・ウルトラマン、そして毎年新作が出るテレビシリーズのニュージェネレーションヒーローズも好調なウルトラシリーズ。その原点は昭和の時代、60年代にまで遡り、怪獣や宇宙人とウルトラマンではなく人間が立ち向かう白黒作品であるウルトラシリーズ第1弾「ウルトラQ」そしてシリーズの基礎を作り上げたヒーローであるウルトラマンと怪獣退治専門のチーム科学特捜隊の活躍を描いた第2弾「ウルトラマン」それにつづく、円谷プロ製作のウルトラシリーズの第3作として登場したのがシリーズ最高傑作と言われる事も多い「ウルトラセブン」になります。

この初期の3作をまとめて昭和1期ウルトラシリーズと呼称される事もありますね。本ブログのテーマである、普遍的且つシンプルな魅力を抱えた魅力あふれる特撮番組です。


「ウルトラセブン」は前作までの違いとして、SFやミリタリー色がより強くなっており敵は怪獣ではなく宇宙人で統一されている事です。「怪獣」が登場するエピソードがあってもそれはあくまで宇宙人が侵略用に手引きした怪獣という扱い。


シリーズとしては本作放映中に怪獣ブームが落ち着いてきており、視聴率的に高い水準は維持しつつもウルトラマンほどの熱狂的なブームには到らず、それでも1年間きっちり放送して幕を閉じた形になっ
ています。


後の昭和第二期ウルトラシリーズはウルトラ兄弟というそれまでのシリーズに登場したヒーローの客演、人間体である主人公や防衛チーム、主人公たちの居候先である家族との交流・ゲストキャラたちの「人間ドラマ」としての比重が高まり、比較的宇宙人や怪獣が起こす「超自然現象」的な事件への対処がメインとなっていた本作「セブン」や「ウルトラQ」「ウルトラマン」とはいい意味で差別化されていくことになります。

その後平成によみがえったウルトラシリーズではその二期の人間を取り巻く「人間ドラマ」と「ヒーロー性」そして1期ウルトラシリーズのもつ「SF性」との融合が毎回試みられるようになっていきます。


円谷黄金期とも言える豪華なスタッフたちが揃った作品


本作ウルトラセブンでは黄金期と呼ばれるウルトラシリーズ創世記のメンバーがほぼ揃っており、製作総指揮に円谷英二、脚本に金城哲夫、上原正三、市川森一、 飯島 敏宏、監督には王道の飯島敏宏や変化球の実相寺昭雄。造形は成田亨、音楽面では 冬木透が担当し、後の二期に続くシリーズでも起用され。そちらでも流用されることが多く。


ウルトラマンとともに以降のシリーズの基礎を築いた作品ともいっていいと思います。第1期と第2期を支えた黄金期のスタッフがバランス良く交わった作品でもあります。現在の目で見ると突飛なエピソードが一部見られたり、ツッコミどころも少なからずあり、SF考証も緩やか。特撮番組でありながらもセブンがほとんど活躍しないエピソードも幾つかあり、シリーズ全体の流れから見るとやや「異質」とみられる部分も多いです。


それでもオリジナリティに溢れた宇宙人たちの造形、レトロフューチャーに溢れたセンスと質感に優れたデザイン。フィルム撮影のシリアス感。当時でなければ出せない俳優陣を含めた重厚な雰囲気…ある意味、ものすごくお金をかけて作った(現代でいう)深夜特撮のような趣もあります。やや大人向き、マニア向きと言われる傾向も強いのもそのためですね。


しかし、そのSFとしてのドラマ性の高さや特撮に寄りすぎないバランスの良さなどもあり、本放送よりも後年に次第に評価をあげていく結果になります。特に昭和一期の作品は、未だに関連書籍・製作者の裏話を含めたインタビューが頻繁に記事になるなど50年以上前の作品とはとても思えないほど未だに作品としての展開が活発です。

また怪獣や宇宙人の造形の高さは元よりリアルタイム世代の知名度やその後のゲーム展開やCM展開などもあり、知名度の高い怪獣も多く。本当に息の長さを感じさせる作品になっています。


現代でも通用する粒よりなエピソードたち


あえて寓話的に描かれながらも現代に現実的に起こっている問題を先取りしたような社会派なテーマを含めた作品も多いのです。宇宙人との相互理解の難しさを描いた「ダーク・ゾーン」や「ウルトラ警備隊西へ」。人類の存在意義や正義の所在を投げかける「超兵器R一号」や「ノンマルトの使者」異星人という異邦人同士の交流とすれ違いを描いた「盗まれたウルトラアイ」ロボットの反乱により人間が抑圧された生活をおくる異性の様子を寓話的に描いた「第4惑星の悪夢」など。

人類同士のディスコミュニケーションによる紛争、アイデンティティの違いによる対立、環境問題や人口問題、そしてAIによるテクノロジーへの恐怖や疑念など…いつの時代にも通じる普遍的なテーマを30分番組として手際よくまとめられているのですね。

実相寺監督の話に特に顕著ですが、夕日をバックにした戦いや丁寧なミニチュアワーク、現実の風景をSFに見立てたものや、光学合成や逆再生などを効果的に用いた前衛的な表現も随所に散りばめられています。時代を越えた永遠の定番とも言える雰囲気をもったクラシックな名作。それがウルトラセブンと言えるでしょう。

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