映画の魅力の一つである映像で見せる力を極限まで追求したような作風で、幻想的な風景と水と煙が立ち上る光景の中に懐かしい風景がふと浮かぶような幻夢的な映像、そして哲学的な登場人物たちの内省…ロシア文学をそのまま映像に仕上げたような圧巻の映像美で送る映画と言う形の一つの極北のような名作をレビューします。
指摘映像の魔術師
ロシアは文学作品にせよ、音楽や映像作品にせよ、極寒の地でもある事からか、どこか内向的なそして人間の内面を鋭くついたような哲学的な内容のものが多い気がしています。
それこそ文学史に燦然と輝くドストエフスキー作品然り、自然環境の厳しさと東方正教会の厳格な教えがそのような感性のベースになっているのかもしれません。
そんなロシアの映像作家の中でも特に強烈な印象を残したのがアンドレイ・タルコフスキー監督でした。国内でも押井守監督作品などにも感じる、魅力的なレイアウトと哲学的な台詞まわしを合わせるだけで、魔力的な魅力を放つ映像作品が作れてしまうものだと思っています。
タルコフスキー監督ももってまわしたような長廻しのシーンや、キャラクターが神妙な面持ちで無言で歩いているシーンなどが非常に多く、恐らくその絵作りは映画というジャンルでないと成立しないし、映画と言うジャンルの強みをもっとも表現している作り方だとも思っています。
例えばストーカーなどは名目上SF作品になっていますが、ほぼ現実にあるロケ地をSF的なロケーションに見立てて描写するゴダール的な手法を用いて作られています。そして、タルコフスキーの作家性はそれ以上に水を強調した幻想的な映像描写と、哲学的な登場人物たちのやりとりです。
映像で語る哲学
惑星ソラリス、ストーカーなど類似のSF作品を幾つか撮ったあとにイタリアに亡命し、晩年の頃撮った作品が本作「ノスタルジア」になります。その名の通り故郷に思いを巡らすと言う監督のパーソナルな事情も重ね合わされた作風ですが
以前撮った作品以上に映像から伝わってくる絵力が強烈で、ロケーションの美しさと哲学的な内省がバランスよく同居した最高傑作ではないかなと思っています。
よく眠くなる映画とも言われますが、この映画に関してはその「眠くなる」も誉め言葉で幻想的な映像と哲学的な問いかけに身を委ねるうちに別に世界に誘われるような、そんな映像なのですね。
絵の力が強く、本質的なものをテーマにしているため時間の流れに淘汰されない、まさに芸術的な映画だと思っています。

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